2008年3月度の神道入門講座が、3月28日にISFセンターで開催された。今月のテーマは『日本人と神道』で、太田垣オフィサーにより英語で講義された。参加者20名、うちアメリカ人11名。
太田垣オフィサーによれば、最近開催する祭儀やレクチャーには、アメリカ人が多数参加する傾向があり、アメリカ人の神道や日本文化の興味への高まりを感じる。そのため、神道の基本的な概念から伝えようと今回のテーマに定めた、とのこと。
はじめに、日本人の心理には神道観が大きく影響し、日本の文化や社会などを理解するにはまず、日本人の宗教観を見る必要があると説明した。もともと神道の祭儀は、農業が発達した日本では自然現象に人々の暮らしが大きく左右されるため、自然神を共同体で崇め、村の安全や産業発達などを祈願したことに由来する。神道の祭りは共同体、社会、国といった集団の平和、安泰を願うためであって、個人のためのものではないのだが、最近は日本でも個人主義が進み、共同体や社会への奉仕の心が失われつつあり、神社でのご祈祷もすっかり個人中心のものに変わってしまった、といった近年見られる問題点も挙げられた。
日本人は神道で生まれ、キリスト教で祝い、仏教で弔うといわれるように、殆どの日本人は、人生を通して神社、仏閣などの複数の宗教施設へ行き人生の意義を確認、経験する。その一方「どの宗教の信者か」と尋ねられると、多くの人が「無宗教」と答える、と説明すると、参加者からは、西洋人のもつ宗教の概念とは、大きくかけ離れていることへの驚きが伺えた。
最後に、日本では複数の宗教が一人の人生に関わる例をあげ、社会と神道の繋がりの強さを述べた。神棚と仏壇が家の中で並んでいる風景、僧侶がたくさんのぬいぐるみをお祓いしている風景、東京国際空港の棟上式、大企業の会社内にある鳥居、そして神職が教化しているわけでもないのに毎年日本では約8千万人の人々が元旦に神社仏閣へ出向く様子などが写真で説明され、日本人参加者さえも不思議な様子で、新たな発見をしたようだった。質疑応答では「日本人の心のよりどころは実際どこにあるのか」「神社の意義は」「わび、さびの精神は宗教観から来るのか」など、アメリカ人から多くの興味深い質問がなされた。日本人参加者にも改めて自文化を問い直すよい機会になったのではないだろうか。
神道は日本人が無意識のうちに必要としている心の重要な拠り所である。ここニューヨークの地でもISFが人々の拠り所としての機能を果たせることができればと思う。
(報告=太田垣亘世オフィサー)
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