神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
新進・気鋭 (1) : 小平美香さん

「神道祭祀」研究の立場
思想研究者として
女性神職として

史料による女性職掌の解明―― 「自信と元気で神社奉仕するのに大切」 

 神道祭祀―平たく言えばお祭り―をどのような視点で捉えるかは研究者の立場によって大きく異なってくる。
 学習院大学大学院で哲学を専攻する小平美香さんが神道祭祀を自身の研究課題としたのは、日本の宗教思想を解明するには「神々というものを日本人がどう捉えていたか」を明らかにすることが重要と考えたからだ。
 「神々をどう捉え、神々とどう関わったか―。それが一番表に出るのが神道祭祀、つまりお祭りなのです」
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 祭祀研究の成果を思想・文化の特質の究明へと押し上げる。祭祀にも歴史のなかで変遷があるので、いきおい作業は史料の読解など過去の領域にさかのぼる。
 その意味も含めて「テキストを出来るだけニュートラルな視点で捉えたい」という小平さんだが、史料・文献へのアプローチを歴史的な事実の解明のためのみにとどめ置くだけで済ますわけにはいかない事情がある。
 小平さんは東京・板橋区にある神社の神主でもある。同神社の祢宜として実際に祭祀にも奉仕する。「神社に生まれ育ったけれど、ご奉仕をするようになってあらためて、日本文化を読み解くのに神道は面白いなと思います」。ただし、それが日本文化を根底で支えるものとして、現代の一般の人にもつながっていかないと意味がないと考えている。
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 祭祀にたずさわり、史料を読解するなかで、女性の立場から時々ハッと気になることが出てくる。過去にさかのぼると、女性神職としての役目というものがもっと明確にあったのではないかということだ。
 神宮最古の文献である「皇太神宮儀式帳」はじめ様々な文書によっても、祭祀において男性・女性がそれぞれの役割分担を担っていたことが分かるという。それはいわゆる「女性シャーマン」的な捉え方ではなく、明文化された職掌としての女性神主の役割といったものである。
 小平さんは、そういう性別での職掌的な役割を知ることは今後、女性神職が単なる代務者としてではなく、自信をもって、元気をもって祭祀と神社の運営を担っていくために大切なことだと考えている。



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