神道国際学会会報:神道フォーラム掲載

式年遷宮の標語募集で最優秀賞に選ばれた富山県の神職 
大峯智之さん


「遷宮で 結ぶ人の輪 心の輪」
 神明奉仕の中で自然に出てきた願い


   「今の世の中、失われてしまった大切なものがたくさんあるけれど、中でも欠けているのが『輪』だと思うのです」
  日本民族として最も大事な祭り「式年遷宮」に関心が広がることで、日本人の見失った「心の輪」を取り戻せれば――そんな願いを標語に込めた。「『輪』はまた『和』に通ずることにもなりますよね」
  生まれ育った実家の神社を守る一方、隣の石川県にある大社に長く奉職した。数年前、本務を実家のほうに戻し、現在は宮司として社頭護持に専念する。
  「地元に帰ったのは、やはり一つの転機になりました。今一度、心を新たにして氏神さんにも、氏子さんら参拝の方々にも、お仕えせねばと思いましたよ」。そんな新鮮な気持ちで仕事をしているとき、自然に、無心のうちにフッと出てきたのが受賞の作品だという。
  2,3年前から頭に浮かんだ言葉を書き留め続け、締め切りが迫ったところで十点ほどに絞り込んだ。「思い入れはあった。でも実際に選ばれるのは大変なのだろうなと。だから、『最優秀だ』と連絡を受けたときも、出品したうちのどれが選ばれたのかが気になって『どれでした?』と思わず聞いてしまいました」
  選考委員には第一線で活躍中の著名な文化人がずらりと並ぶ。「それは光栄で、感無量ですよ」
  だが感激と同時に、「『お伊勢さん』は日本人にとって特別な神社。国民こぞってお参りしてこそ踏ん張れるものがある。清々しい森に心洗われるし、先祖が守り続けてきたものを思い出すこともできる」と、神明に奉仕する神主としての言葉に力を込めた。

シンボルマークで最優秀賞に選ばれた大阪のデザイナー
岩田重一郎さん


大御神の光が広がるイメージで
「お伊勢さん」に心洗われる有り難い経験に

  「この齢になって非常に有り難い経験をさせていただいた。そんな気がしているのです」
  制作活動45年というベテランのイラストデザイナー。「『最優秀』の知らせには、ちょっと驚きました。いい死に土産ができました」と照れるが、今回の仕事に関しては特別の印象と充足感を覚えたようだ。
  「第62回」ということで62本の光線と、神宮正殿の御屋根とを組み合わせたデザイン。天照大御神が天の岩戸から出てこられたときの四方に広がる光をイメージしたという。
  いつも寝る前に、枕元にノートを置く。アイディアやイメージが湧くと、そこにメモをとる。「私の場合は頭で考えるというより、手先から出てくる感じですね。何か知らないが、とにかく描きまくるのです」
  今回選ばれた作品も、締め切りの前々日の晩、急に新たに湧いてきた着想だという。すでに数点を出品していたが、その晩「あっ、これだ」と思い立ち、筆先を動かし続けた。翌日パソコンに向かって作品として仕上げ、締め切り当日に発送した。
  「このように、デザインには、言葉は悪いが、『行き当たりばったり』とか『運がいい』とかいう側面もあるのですよ」
  この5月、受賞者として神宮に招かれ、御垣内に参拝した。「恥ずかしいことに、人生で『お伊勢さん』をあまり意識したことなかった。まさに日本のシンボル。西行法師の『――かたじけなさに涙こぼるる』の歌がしみじみ分かった。心洗われる感じでした」
  今、オフィスには、これまでなかった小さな神棚が祀られている。

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