神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
露中の日本研究の交流をめざして

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モスクワで日本学者が交歓会
流暢な日本語で協力を約束

    7月18日(火曜日)、ロシア連邦共和国の首都モスクワ市に、ロシア・中国・日本の文化研究者が集合、交流会を開催した。
    これは、中国杭州市の浙江工商大学日本文化研究所の王勇教授を含む教授連が、ロシア旅行でモスクワを訪問することになり、この機会に、ロシアの日本学者たちと会えないだろうか、と神道国際学会東京本部に打診があり、本部は神道国際学会モスクワ代表部と連絡したうえで、急きょ、「ロシア・中国・日本の文化研究者特別交流会」と銘打った会合をもつことになったもの。

    会場となったモスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学(AA大学)は、神道国際学会のモスクワ代表部が居を構えるところ。夏休みのため、全館が工事中だったが、入学試験があるということで、多くの学生が詰めかけ、同大学の人気の高さを示していた。
    11時からの会合に集まったのは、中国側からは、王勇教授・王宝平教授・江静助教授(いずれも浙江工商大学)と、王勇教授夫人で浙江婦女旅行社社長の楊寒英女士の四人。ロシア側からは、エリゲーナ・モロジャコーワ博士(神道国際学会モスクワ代表部所長、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター長)、アレクサンドル・メシェリャコフ博士(ロシア国立人道大学教授)、エレーナ・ディアコノーバ博士(ロシア国立人道大学助教授)、アレクサンドル・クラノフ氏(ジャーナリスト)、フェジアニナ・ラダ・モスクワ代表部事務局長の5人。日本側からは梅田善美理事長と梅田節子事務局長が出席した。
    まず、梅田理事長がこの会を開くにいたったいきさつを説明。AA大学のミハイル・マイヤー学長からの歓迎の挨拶ののち、浙江工商大学の胡祖光学長からのメッセージを王勇教授が代読。記念品の交換となった。
    マイヤー学長は、神道国際学会との長年の交流について謝意を述べ、AA大学の学生のなかで一番人気のある外国語は中国語であり、二番目が日本語であると披露、さらに、モロジャコワ・モスクワ代表部所長とは大学のクラスメートであると述べ、終始なごやかな雰囲気であった。
    工事が終わったばかりの代表部の部屋を見学した後、学長室にもどり、ロシア側からモロジャコワ所長が「ロシアにおける日本研究の歴史と現状と展望」をテーマに、また中国側からは王勇教授と王宝平教授が「中国における日本研究の歴史と現状と展望」について発表した。
    その後、場所をモスクワ国立図書館の分館である東洋文庫に移動。和やかに昼食をとった後、座談会「露中日の日本研究の相互交流の可能性をさぐる」をテーマに、今後の協力について熱心な討議を重ねた。
    本会が発足して以来、ロシアCIS諸国の活動拠点であるモスクワで、中国・ロシアの日本学者たちが集まり、日本語で互いの交流を深め、将来的な見地を話しあうのは、今回が初。この会合について、浙江工商大学日本文化研究所の副所長である王宝平教授と、神道国際学会モスクワ代表部所長のエリゲーナ・モロジャコワ教授は、次のような感想を本紙に送ってきた。


******* 露中日研究者モスクワ交流会に出席して *******

     赤の広場、レーニン廟、クレムリン、いずれも初めて足を踏み入れた場所ではあるが、旧ソ連文化の薫陶を強く受けて成長してきた二十世紀半ば生まれの中国人にとっては、中国で幾度も出会った心象風景である。7月18日、私たち浙江工商大学一行4人は、このような革命聖地ともいうべき赤の広場と隣り合っているモスクワ大学で、露中日研究者モスクワ交流会に臨んだ。
     神道国際学会の梅田善美理事長と梅田節子事務局長が、わざわざ東京から応援に飛んでこられたのはわれわれを心強くした。この交流会が実現できたのは、両氏の熱心なご斡旋と周到なご準備の賜物にほかならなかった。
     モスクワ大学付属アジア・アフリカ諸国大学マイヤー学長が、入試試験で多忙を極める中、時間を割いて臨席くださった。氏のユーモアにあふれたご挨拶に続いて、浙江工商大学日本文化研究所所長王勇教授が、同大学胡祖光学長からのメッセージを読み上げ、今後の更なる交流の意思を伝えた。
     ついで梅田先生の司会のもとで、ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本部長モロジャコワ博士が「ロシアの日本研究小史」というテーマで、ロシアの日本研究の歩みを紹介してくれた。そして、筆者と王勇教授はそれぞれ「中国における日本文化の研究」、「中国における日本研究基地の構築」を発表し、中国の日本研究の情報を提供した。
     午後はロシア国立図書館付属東洋文庫に場所を移して、ロシア料理をご馳走になってから、露中日の日本研究の相互交流の可能性について、ひざを交えて率直な意見交換が行われた。
     初めての交流会であるが、使用言語は国連の公用語となっている中国語でもなくロシア語でもなく、日本語であった。思うに、日本語で飯を食い始めてこのかた二十余年の星霜を閲した。その間、外国人との交流が十指で数え切れそうにもないが、ロシアの研究者と面と向かっての会議は初めての体験である。かつての革命の同志から日本学の同志に転換したことに、なんとなく奇妙な感じを抑えることができなかった。時代の移り変わりに感慨ひとしお深いものがある。
     散会後、再びクレムリンの前に立った。真っ青な空を流れる白雲が、宮殿の美しさを更に際だたせていた。たっぷりと開放感を味わった一日であった。

(王 宝平 浙江工商大学日本文化研究所副所長)

******** 日本研究の未来のために ********

    7月18日にモスクワで開催されたロシア・中国・日本の文化研究者特別交流会は、ロシアの私たちにとって、内容のある、充実した会合になりました。この交流会が、中国側にも有益な会合になったことを希望しております。この交流会の発起人になった梅田理事長のおかげで、ロシアの日本学者が初めて中国の同僚と会い、ロシア・中国における日本学の状態および日本学を学んでいる学生の養成のことを話し合うようになりました。ロシア研究者に日本学に対する中国研究者の考え方とアプローチが、中国の研究組織・教育組織が分かることは非常に興味深いことです。ロシア研究者はこの交流会が共同研究と講師・研究者・学生の交換のきっかけになると確信しています。モスクワ国立大学付属アジア・アフリカ諸国大学は日本学者を養成する主なセンターとして浙江工商大学日本語言文化学院と協力する可能性を見つけると希望しております。私自身はロシアにおける主な研究組織であるロシア科学アカデミー東洋学研究所の日本研究センターのセンター長として当センターと日本語言文化学院との共同研究は見通しが明るいと思っております。

(モロジャコワ・エリゲーナ
神道国際学会モスクワ代表部所長・歴史学博士・ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター長・モスクワ国立国際関係大学教授)




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