神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
学会・学術情報 : 各公開シンポジウム


::::「國學院大COE」公開シンポ::::

国内外の神道研究者による ネットワーク作りを討議
本学会ブリーン、テーウェン両理事もパネリストに

    國學院大学 世紀COEシンポジウム実行委員会は9月22、23日、公開シンポ・研究フォーラム「神道研究の国際的ネットワーク形成」を開催した。文科省COEプログラムに認定される同大学の「神道と日本文化の国学的研究発信の拠点形成」に連動する連続シンポ「神道・日本文化研究国際シンポジウム」の第五回。国内外の研究者によるネットワーク作りなどについて、実現可能なプログラムは何かを討議した。2日目には同大学が推進している神道関連のデータベース化の事業についても議論した。学内外、海外から研究者がパネリストとして参加。神道国際学会理事でもあるロンドン大学のジョン・ブリーン教授、オスロ大学のマーク・テーウェン教授も提言者に加わった。
    初日のシンポでは、韓国の魯成煥・蔚山大教授が「神道研究における日韓協力方案」、中国の色音・北京師範大教授が「中国における神道及び日本文化研究のネット化の必要性と可能性」、テーウェン教授が「神道研究のネットワーク作り」、ブリーン教授が「知的ネットワークの意義と機能」、アメリカのジョン・ベンテリー・北イリノイ大准教授が「神道古典と言語学とのネットワーク形成」、井上順孝・國學院大学教授が「英文神道事典のネット上での展開と神道研究の国際化」と題して話した。
    魯教授は韓国における神道への否定的イメージ、それを前提とした神道研究――という現状を抜け出すには、生活宗教、基層文化としての諸側面に焦点を当てた両国の比較研究、共同研究が必要だとした。色教授は中国における日本学の現状として、研究機関は多いが横断的なつながりが希薄だとし、ネット化や研究者の交流が課題だとした。
    テーウェン教授は神道国際学会理事としての経験から同学会の功績と課題を紹介するとともに、神道研究には周辺分野の研究者も含めたオープンな議論が大切だと強調し、一層のネットワーク作りの可能性に期待を表明した。ブリーン教授は、外国研究者に迎合するだけのネットワークには魅力がないとし、国内外の研究者、さらには研究対象者も加わった接触、討論が可能でこそ知的で刺激に富んだ機会になるとした。
    ベンテリー准教授は言語学を研究する立場から、日本文化研究者なども含めた電子フォーラムを設けること、言語学的資料の電子化を促進することで、より学際的なグループが形成されると主張した。井上教授は、神道研究の国際化に関係する一つとして、國學院大が進める英訳・神道事典のオンライン化を紹介し、同事業の留意点や、国際的な研究ネットワーク形成における課題も指摘した。


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::::奈良で「一の宮シンポ」::::

神道や神社の世界観を学ぶ 「自他共生」を目指して
本会の薗田会長も講演

    「自他共生」をテーマとした公開講座「奈良一の宮シンポジウム」が9月17日、奈良市で開かれた。各界講師による講演とパネルディスカッションが行なわれ、平和実現という世界的な課題に対して、「共生」「癒し」など解決のキーワードを秘めた神道や鎮守の森≠フ世界観、その意義について議論を展開した。主催は全国エコツアー観光同好会奈良支部、後援は奈良市、一の宮巡拝会ほか。
    講演は関西大名誉教授の奥村郁三氏が「神道と祓=v、アメリカ椿大神社禰宜のコウイチ・バリッシュ氏が「アメリカ人から見た神道」、高野山蓮花院大阿闍梨の東山泰清氏が「神仏習合の意義」、秩父神社宮司・京大名誉教授で神道国際学会の会長でもある薗田稔氏が「古代国家と一の宮祭祀」と題して話した。またディスカッションには一の宮巡拝会顧問の齋藤盛之氏、同会北海道ブロック世話人のダスティン・キッド氏が加わった。司会は同会代表世話人の関口行弘氏。
    講演で奥村氏は社会秩序に対する破壊行為など「大祓詞」に見る古代人の罪観念を紹介し、「太古の人々は言わずとも共同体と一体にならねば生きられないこと、自然への畏れが大切なことを知っていた」と話した。バリッシュ氏はアメリカ椿大神社の紹介とともに、自然から命を恵まれる意識や直感を大切にするところに神道の素晴らしさがあると語り、東山氏は高野山では日々の修行と生活の中で神仏を共に違和感なく礼拝するとして、神仏習合という日本人の共生意識を説いた。薗田氏は「中央コスモロジーの地方へのもたらし」という姿を描きながら、各国一の宮については国司を中心に祭祀を再現する社として捉え、「神道は伝承の中で儀礼的に祭りを再現することで効力を発揮する」と儀礼祭祀の意義を強調した。
    このほかディスカッションで齋藤氏は、人間ではなく神々が住まうがごとく鎮座する神社という場の卓越さを説明し、キッド氏も心の広がりとゆとりが神道には感じられ、神頼みもやがては生かされている感謝の気持ちに自然と変わっていくところに神社巡拝の魅力があると語った。
    なおシンポに合わせ、当日と前日の2日間、全国一の宮の風景を描いた絵画や写真などを紹介する「社叢百景展」も同じ会場で催された。


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::::国際シンポ「儀礼の力」::::

「立命館大COEプログラム」と 「ロンドン大SOAS日本宗教センター」が共催

日本中世の宗教儀礼に力学的問題と「権能」を捉える

    国際シンポジウム「儀礼の力――学際的視座から見た中世宗教の実践世界」が9月14、15日、京都の立命館大学で開催された。日本中世に作り出された宗教儀礼の行為やその思想を中世の力学的問題として捉え直し、儀礼の「権能」の実相解明を試みた。
    主催は立命館大学 世紀COEプログラム「京都アート・エンタテイメント創成研究」、およびロンドン大学SOAS日本宗教研究センター。編成は同日本宗教研究センターのルチア・ドルチェ所長、日本学術振興会特別研究員の松本郁代氏。
    発表は次の通り(発表者・所属・演題の順、ただし敬称と肩書略)。

【儀礼としての宗教】
1)斎藤英喜・佛教大学「呪詛神の祭文と儀礼」
2)大内典・宮城学院女子大学「中世声明の美的表現力と権力」
3)ロリー・ミークス・南カリフォルニア大学「なぜ儀礼が重要か―中世における法華寺の儀式と社会」。

【儀礼的身体】
4)彌永信美・仏教学研究家「密教儀礼と<念ずる力>―『受法用心集』の<髑髏本尊儀礼>を中心にして」
5)ルチア・ドルチェ「二元性の儀礼―不動・愛染と秘力の図像化」。

【社会・文化的実践】
6)田中貴子・甲南大学「聖天の縁起とその儀礼―双身歓喜天を中心に」
7)スティーブン・トレンソン・京都大学「醍醐寺、祈雨修法と清滝権現をめぐって」
8)松本郁代「入洛する神輿・神木の『神威』」。

    2日目の最後には発表者が揃っての全体討議も行なわれた。
    うち、神道にも関連する発表として松本氏(8)は、中世に現れた延暦寺や興福寺の衆徒による朝廷・幕府に対する政治的な要求示威「嗷訴(ごうそ)」を取り上げ、特に延暦寺の嗷訴における日吉社の神輿・神木に見る神威の権能を探った。神輿の動座命令から入洛、現地での振り上げ、嗷訴後の朝廷による神輿造替までを体系的に把握するとともに、祭礼の延引の事実も加えて祭神・神体を主体とする儀礼として捉えることで神威権能の社会的な側面を考察した。

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