神道国際学会会報:神道フォーラム掲載

インターナショナル・シントウ・ファウンデーション
ニューヨーク便り


第59回国連広報局認可NGO総会に参加
分科会「鎮守の森を地球の隅々に」開催

鎮守の森を世界に紹介
国連NGO分科会と神道セミナー


 平成18年(2006年)9月6日から8日まで、ニューヨークの国連本部では、第59回国連広報局認可NGO世界総会が開催され、67カ国の540NGOから代表者約2000人が参加し、「未完の仕事:人間の安全と持続可能な発展に役立つパートナーシップ」を主題に、さまざまな問題提起と議論で、世界のNGOネットワーク作りの必要性を訴えた。
    ISF(インターナショナル・シントウ・ファウンデーション)もNGOとして、「オイスカ・インターナショナル」と「アメリカにおける平和のための宗教」の協力を得て、『鎮守の森を地球の隅々に』と題して、9月8日の午後1時15分から90分間、分科会を開催、アルメニア、ドイツ、イギリス、アメリカ、ハイチなどのNGO代表者約80名が出席した。
    この分科会のねらいは、国連が2006年を「砂漠と砂漠化にかかわる国際年」と提唱しているのにちなみ、日本の神社では「鎮守の森」と呼ばれる生命に欠かせない森や水資源をどのように維持しているか、をモデルにして、世界の緑化に役立てようというものである。
    最初に日本における森作り、森の再生を記録したDVD「日本は森の国」を上映して、出席者の注目を引いた。
    ついで薗田稔・神道国際学会会長が「ディープ・エコロジーと日本の宗教文化」について講演。薗田氏は、1973年にスウェーデンの学者が提唱し、欧米諸国で広く受け入れられた「ディープ・エコロジー理論」を紹介し、その考えは日本の古代宗教である神道にも影響を与えているヒンズー教、仏教、大衆的道教などのアジアの伝統的価値観に見ることができ、多くのスピリチュアルな伝統が、人間だけでなく、地球上の動植物すべてに等しい権利を共有していることを認めていると指摘し、すべての宗教宗派は、それぞれの教義に共通する万物の霊性を再考して協力すべきと強調した。そして、神道における鎮守の森を守り育てる経験が、地球に広く認識されるよう訴えた。
    オイスカ・インターナショナルの中野良子総裁は、1961年以来、オイスカが農業の開発、植林および教育の普及のために活動している業績を紹介した。環境を守るプログラムが二五の国と地域で実施されているとともに、子供の植林プログラムを促進し「ふるさと」回帰の活動を重点的に行っていると強調した。
    ついでバッド・ヘックマン師が、アメリカにおける諸宗教間の協力と、環境保全に力を尽くす人達の働きを紹介して、そうした協力関係を強めることで希望のサインが高く掲げられると強調。8月下旬に、日本の京都で開催された「第八回世界宗教者平和会議」に二千名の諸宗教代表者が集まって共通の目標を定めたことを、その良き例証とした。
 出席者からはコメントや質問が相次ぎ、貴重な経験や業績を話したスピーカーに感謝し、また各地での同様な植林活動や緑化運動も紹介された。最後に、モデレータをつとめた梅田善美ISF理事長が、互いにインターネットを活用して、有意義な活動を連絡しあい経験を共有することを期待すると述べてワークショップを閉会した。

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神道文化特別セミナー『日本は森の国 ― 神々、自然そして生命』

    前日の9月7日には、ISFニューヨーク・センターで『日本は森の国 ― 神々、自然そして生命』と題する神道文化特別セミナーを開催した。
    同センターでは、昨年から日本語による神道文化入門講座を実施し好評だが、今回は上記の国連NGO分科会で発表するため出向中の薗田稔氏(京都大学名誉教授、秩父神社宮司、神道国際学会会長)と中野良子氏(オイスカ・インターナショナル総裁)をゲストスピーカーに招き、特別セミナーと銘打ったもの。
    午後6時30分の開講時には、ニューヨーク・センターの広間は50名を越える出席者で満員となった。
    最初に、中野良子氏(写真)が講話。1961年に創設されたオイスカの45年にわたる国際的な幅広い活動を紹介した。オイスカは日本に本部を置き、26の国と地域に組織を持ち、農村開発や人材育成、環境保全、植林活動などを展開している国際NGO。「産業・精神・文化のバランスを世界に広める」ことを目的に活動している。中野氏は、発展途上国での子供たちを主役にした植林運動や、「ふるさと」に根ざす教育事業の広がりについて語り、産土(うぶすな)を大切にする日本人の精神性を国際化することを訴えた。
    続く薗田稔氏は「森に生きる文化と神道」と題して、鎮守の森と水源を大切にする神社のありかたを、さまざまな文献資料を引用しながら解説し、神道の文化が世界平和と人類の福祉を増進するために役立つことを強調した。また、日本語の豊かな表現力を解き明かし、たとえば、神という言葉で表現されるのは「見えない存在」であり「形を見せない霊的な存在」であることを語り、聴衆の興味を引いた。さらに昨年、愛知県で開かれた「愛・地球博」で森をテーマに神道文化の粋を集めて、『天空鎮守の森』と『千年の森』を会場に設営し、同時にハイビジョン映像作品シリーズ『日本は森の国』を制作して、公開したことを紹介した。
    このあと、上記のDVD映像作品『日本は森の国』五部作のうち、第一話と第二話が上映され、薗田氏の講話につながる情報が生き生きと鮮明な画像により伝わり、聴衆に感銘を与えた。
    この日の出席者の中には、これまでの文化講座の常連のほかにも、コロンビア大学の東洋学部や宗教学部や中世日本研究所の教授の顔も見られた。講話と映像の後は、神道文化にちなんで、直会が開かれ、講師との会話が遅くまで弾んだ。

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    同時多発テロから5年めの9月11日、NYセンターは、新渡戸涼恵オフィサーが同日に行われた3つのセレモニーに参加した。
    ワールドトレードセンター跡地に隣接するセントポールズ・チャペルでの式典では、テロが起こった朝8時35分(米時間)に合わせて宗教者達が教会の平和のベルを鳴らし、亡くなった方々の冥福を祈った。各国からのメッセージの中には日本の小学校からの千羽鶴もあった。式典の模様はABCテレビのニュース番組ブロードキャストで生中継された。
    夕方5時からはユニオンスクエアにあるガンジー像の前で「ユニティウオーク・ミッション・ステートメントNYC」が行なわれ、新渡戸オフィサーが自身のオリジナル曲「花の祈り〜Prayer of the Flowers〜」をオープニングソングとして歌った。5年前の9.11の映像を見て産まれたその楽曲には感動の言葉が相次いだ。9月11日は100年前にマハトマ・ガンジーが南アフリカで非暴力の抵抗運動を組織した日であり、最適な場所が選ばれたと思われる。
    その後、ピア でのNY本願寺主催の灯籠流しに参加。多くの宗教者達と共に亡くなった方々の冥福を祈った。式典が終わった時、ワールドトレードセンターをライトアップした二本の光が、雲を突抜け天を照らしていたのが印象的だった。
    翌12日はマンハッタンにある聖バーソロミュー教会でNY宗際センター主催の国連総会成功祈願祭が執行され約200名の参列があった。新渡戸オフィサーは龍笛の奉納、昭和天皇御製の和歌を朗唱した。参列者や諸宗教聖職者からは「神道のイメージが一変して、清々しさを感じた」「背景に大自然が感じられて素晴らしかった」等の声が挙げられ、神道というと軍国主義的∞偉そうで敷居が高い%凵Aまだまだ誤解が多いことを実感するとともに、直接伝えてゆく大切さを学んだ。
    10月4日、ハウス食品ニュージャージー工場完成記念のグランド・オープニングセレモニーが行なわれた。ISFは2005年に地鎮祭を斎行したが、今回も神道式の竣工祭を執り行いたいとの依頼で、新渡戸オフィサーが斎主を務めた。参列者は桜井本篤・在ニューヨーク総領事館総領事を初め、ブライアン・レビン町長など非日本人も多く総勢100名を越す賑わいとなった。今後は米国東海岸の店舗にはニュージャージー工場から新鮮な豆腐が配送されるとのこと。
    10月7日、以前お宮参りに来られたジョシュア・センザー様と二宮裕子さんの神前結婚奉告祭が、ロングアイランドのレストラン『La Marmite』で行われた。新郎のジョシュアさんはユダヤ人だが、どうしても誓詞を日本語で奏上したいと特訓していたようで一言一言を大切に読み上げ参列者を感動させた。最後にユダヤ人が結婚式で行なう伝統儀式であるグラス割りも行なわれ、盛大な拍手が送られていた。今回の神前結婚式では矢形仁美さんが司会をつとめ、福島輝美さんと管真由美さん両名の巫女舞いが奉仕された。

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