神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
水の都ベニスで国際ワークショップ
『神道をめぐるシンボリズム』

  10月9日(月)、10日(火)の両日、イタリア北部の観光地ベニスで、神道研究をテーマにした国際ワークショップ『神道をめぐるシンボリズム』が開催された。主催はイタリア国立大学のひとつであるカ・フォスカリ大学で、神道国際学会が共催。平成16年(2004年)に神道国際学会が同大学の東アジア学部図書館に神道大系121巻を寄贈したことがきっかけで実現したもので、同大学で神道を主題にして国際的なワークショップが開催されたのは初めて。教授や大学院生などおよそ40人が集まった。

   中世のたたずまいがそのまま残り、世界遺産にも選ばれている水の都ベニス。空港に到着した人々はそれぞれ水上タクシーに乗り、グランドカナルと呼ばれる運河を走り、市内に入る。細い路地が迷路のように連なるベニスの町は、自動車も自転車もすべて乗り入れ禁止で、水上交通を除けば歩くしかない。
   町の景観を損なう近代的建築物は禁止されているので、総合大学であるカ・フォスカリ大学も、市内31箇所に分散しており、二万人をこす学生や院生たちそれに教授連は、授業に合わせて31箇所に点在する教室を飛び回るという。
   2年前に同大学の東アジア学部図書館に神道国際学会が「神道大系」を寄贈した時に、マシモ・ラベリ教授とのあいだで神道を主題としたワークショップを開くことについて話し合いがおこなわれ、それ以後、ラベリ教授を中心に、大学院生のアンドレア・デ・アントニさんと、同学部で博士課程を修了し現在法政大学で特別研究員をしているエリカ・バッフェリさんが全面的に協力して開催にこぎつけた。
   カ・フォスカリ大学東アジア学部は、運河に面した16世紀の貴族の邸宅の内部を改修した堂々たる建物の中にある。内部にはいちどきに80人しか入れさせないという歴史的建造物のため、発表者以外の参加者も院生や関係者などごく限られた顔ぶれとなった。以前、神道エッセイ・コンテストで一位になった院生のタツマ・パドアンさんの顔もあった。
   ワークショップは東アジア学部ミーティングルームで、英語を使用言語としておこなわれた。まずマグダ・アビアッティ東アジア学部長が挨拶。アビアッティ学部長は、2年前の「神道大系寄贈式」に言及。この式典は、神道大系の寄贈の際に、梅田節子事務局長が斎主となり、梅田善美理事長が典儀として斎行したもので、学部長は、おごそかで清楚な神道祭典の雰囲気に感動した、今日のワークショップが開かれたのは、あの式典の成果であろうと述べた。
 2日間にわたり10人が発表したが、それぞれの講演者とタイトルは、次のとおりである。薗田稔・京都大学名誉教授が、「神道伝統における精神生活のシンボリズム」、マーク・テーウェン・オスロ大学教授による「比較宗教にみる神道の出現」、アレキサンドル・メシャリャコフ・ロシア国立人文大学教授による「聖武天皇―仏教の奴隷かあるいは神道の神への忠節な召使か」、ベルナール・フォール・米国コロンビア大学教授による「諏訪神社の御室祭と中世における意義」、エルゲーナ・モロジャコワ・ロシア科学アカデミー日本センター所長による「国家神道と国教への影響―ロシアに及んだ日本の体験」、三宅善信・金光教春日丘教会長による「教派神道と現代の国家権力とのあつれき」、梅田善美・神道国際学会理事長による「大本―日本の新宗教運動の母」、大崎直忠・テレビ・アジア誌東京所長による「日本のテレビ界にみる神道」(梅田氏代読)、マシモ・ラベリ・イタリア国カ・フォスカリ大学教授による「現代神道の伝統における新しいシンボルの構築」、王勇・中国浙江工商大学教授による「中国における神道研究の可能性」で、それぞれ三十分から四十分の発表に対して、フロアとの活発な質疑応答が続いた。発表論文は、後日、神道国際学会から刊行される。

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