神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
世界平和の願い込め、ニューヨークで雅楽演奏会

ISFが協賛 神道国際学会も協力
小野雅楽会ほかがボランティアで出演


 日本の国際連合加盟50周年を記念する雅楽演奏会「雅楽の夕べ」が昨年11月28日夜、国連本部に程近いニューヨーク市のジャパン・ソサエティで催された。招待された世界各国の国連大使はじめ国連関係者、各界で活躍中の人々らが、千数百年にわたって日本で伝承されている雅楽・舞楽、平和を祈る神楽舞「浦安の舞」の華麗な世界に浸った。主催は国連日本政府代表部とジャパン・ソサエティ。協賛は神道国際学会の関連団体で国連認可NGOのインターナショナル・シントウ・ファウンデーション(ISF、本部・ニューヨーク市)。出演は小野雅楽会ほか。演奏後のレセプションでは、主催者を代表して国連日本政府常駐代表の大島賢三・全権大使と、ジャパン・ソサエティのリチャード・J・ウッド理事長が歓迎の挨拶を行なった。協賛側からは神道国際学会の梅田善美理事長が小野雅楽会の紹介を含めて挨拶した。ISFの深見東州代表も案内プログラムのなかで、平和の願いが込められた今回の催しにメッセージを寄せた。

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  翌々日の30日には、同市のコロンビア大学ドナルド・キーン日本文化センター設立20周年を記念する雅楽演奏会「雅楽〜宮中の音楽と舞」が、大学に隣接するリバーサイド・チャーチで開かれた。主催は同大学の中世日本研究所。ISFと世界芸術文化振興協会が協賛した。小野雅楽会による演奏・舞楽とともに「浦安の舞」も舞われた。演奏の一部には、同大学音楽学部の「雅楽カリキュラム」の学生も加わり、初心者ながら精一杯の演奏を披露した。

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国連加盟五十周年記念「雅楽の夕べ」
主催=国連日本政府代表部/ジャパン・ソサエティ


五十数カ国の国連加盟国大使や代表者が来場
国連関係者、要職者らも

 日本が国連に加盟したのは1956年12月18日。終戦から11年余のこの日、日本は名実ともに国際社会への復帰を果たした。以来、半世紀。成熟した先進国となった日本に対して、世界の平和と安全、地球規模の諸問題などに関して国際的にリーダーシップを発揮してほしいとの声はますます高まっている。
 「加盟50周年」を迎えた昨年、国連認可NGOとして国際社会における日本の役割を果たそうと活動を続けるISFは、佳節の記念行事を企図する国連日本政府代表部に対し協力を申し出、諸方面とも協議を重ねた。その結果、日本文化の紹介にふさわしいものとして今回の「雅楽の夕べ」の開催が決定。大島大使からISFに対して、準備と実施にあたっての正式な協力要請があった。
 これを受けて日本側の神道国際学会では、小野雅楽会に対し出演を依頼、快諾を得るとともに、渡米・開催までの手続きや準備など諸側面で協力を図った。

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 今回、披露された演目は「平調の音取」「越天楽」「陪臚」、続いて神楽舞「浦安の舞」、舞楽「陵王」「納曽利」。出演は小野雅楽会(雅楽・舞楽)と、癪ス典子と新渡戸涼恵の両氏(浦安の舞)。
 50数カ国の国連加盟政府代表部の大使や、国連の上級幹部らが訪れたほか、ニューヨークで活躍中の日本人や各国の人々が招待された。
 観衆は、奈良・平安朝の宮廷における「雅楽寮」に始まり、以後、千数百年も原型を変えることなく継承されてきた雅やかな奏楽・舞楽の、古色と華麗さの融合した世界に魅了された。
 同時に、「心安らかに」との趣意が込められた「浦安」を名に冠し、昭和天皇の平和を願う御製をもとに多忠朝氏が作曲振付した「浦安の舞」が、あでやかな本装束の二人の舞姫によって舞われ、観客は国境を越えて祈りの雰囲気を感じとった様子だった。

日本の国会議員二十三人も祝意のメッセージ

 演奏終了後には、歓迎のレセプョンが開かれ、主催者として大島大使とウッド理事長が挨拶した。梅田理事長は、小野雅楽会の紹介とともに、国連NGOの一員として祝意を述べ、全日空の協力に言及した。
 なお今回の演奏会には、日本の国会議員二十三人から、意義ある行事の開催を祝する主旨のメッセージが寄せられた(下欄参照)。また後日、大島大使から小野雅楽会へ懇切な礼状が送られてきたが、そのなかで特に、韓国の大使が自国の伝統音楽との接点を見出して共感していたことが触れられていた。

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大島賢三・国連大使のレセプション挨拶(要旨)

 まずは共催のジャパン・ソサエティと、多大なる協力をいただいたISFおよび梅田理事長に感謝申し上げます。国連加盟より50年間、日本は世界平和の構築と安定・発展に資する国家たらんと、確固たる道を歩んできたと確信しております。そして今宵は、雅楽本来の精神を今に伝える小野雅楽会を迎え、演奏を堪能することができました。今イベントには日本の国会議員23人が祝意のメッセージを寄せてくださったことにも触れねばなりません。メッセージは、世界平和への日本の責務を、また雅楽も内包するところのアジア文化の調和と寛容の精神を、改めて強調するものでありました。敬意と感謝を申し上げます。最後に、お集まりの皆さんの繁栄と幸運を心よりお祈り申し上げます。

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   国連加盟50周年記念「雅楽演奏会『雅楽の夕べ』」を終えて

▽小野雅楽会の小野貴嗣会長=「加盟50周年」にあたり世界平和を祈るという主旨のもと、観衆やスタッフが一つになって演奏会ができたことに意義深いものを感じています。神道や日本の伝統文化が有する平和的な精神を、言葉を超えて伝え得るのが音楽です。その点をご理解いただいているからこそ、各国の大使はじめ多くの聴衆にお越しいただけたのだと思います。今後、お集まりの方から、さらに多くの人々へと、日本の心が広がっていくことを望んでやみません。

▽「浦安の舞」の癪ス典子さん=「加盟50年」にあたっての催しに出演させていただき大変に光栄です。この舞の主旨を胸に、世界平和を念じながら舞わせていただきました。レセプションで「祈りの心が感じられたよ」と声をかけていただき、本当に嬉しかったです。

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下記の国会議員の皆様から、この記念雅楽演奏会にご懇篤なご祝辞をいただきました。

逢沢一郎様・あべ俊子様・岩城光英様・遠藤利明様・遠藤宣彦様・大野功統様・岡田広様・喜納昌吉様・木原誠二様・倉田雅年様・古賀一成様・島村宜伸様・下地幹郎様・鈴木寛様・関谷勝嗣様・高市早苗様・筒井信隆様・中川雅治様・平沼赳夫様・藤村修様・古川禎久様・松浪健太様・鷲尾英一郎様         (五十音順)  
全日本空輸株式会社(ANA)様には、雅楽会の楽器・装束の大型荷物を無償で運んでいただきました。

ありがとうございました。
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コロンビア大学ドナルド・キーン日本文化センター二十周年記念  
「雅楽〜宮中の音楽と舞」
主催=同大学中世日本研究所


大学隣接のリバーサイド・チャーチで
満席のニューヨーカーから感動の声

 日本文学研究の第一人者で日本文化にも造詣の深いコロンビア大学名誉教授のドナルド・キーン博士が学内に開設した「ドナルド・キーン日本文化センター」が昨年、設立20周年を迎えた。11月30日の記念雅楽演奏会「雅楽〜宮中の音楽と舞」は、今回の小野雅楽会の渡米を機に、同大学の中世日本研究所の主催によって実現した。ISFと世界芸術文化振興協会(深見東州代表)は、日本文化研究に実績の豊富な同大学で開かれるこの催事に賛意を表明。全面的に協賛・後援した。
 くしくも昨年9月、同大学音楽学部の一講座「ワールド・ミュージック・アンサンブル」のなかに、実技をともなう「雅楽邦楽カリキュラム」が新設された。カリキュラムを受講する学生らにとっては一流の雅楽演奏を生で聴き、肌で感じる絶好の機会となったようだ。
 会場となったリバーサイド・チャーチ内のシアターはニューヨーク市民ら観衆で満席に。「平調の音取」「五常楽の急」「越天楽」「陪臚」、引き続いて「浦安の舞」、休憩を挟んで「陵王」「納曽利」が披露された。うち、「越天楽」には「雅楽カリキュラム」の学生が加わり、雅楽器に触れてまだ二カ月ながらプロに導かれての真剣な演奏に盛大な拍手が沸いた。

雅楽器不足――資金調達の販売Tシャツは
Gaga over GAGAKU(雅楽に夢中!)

 最後には出演者、関係者、裏方スタッフ一同が舞台上に勢揃い。協賛者を代表して挨拶した梅田理事長が、雅楽器不足が悩みという「雅楽カリキュラム」に対して小野雅楽会からプレゼントがあるとのニュースを発表。小野貴嗣会長からルーシュ所長に楽箏が手渡された。
 会場からは「ニューヨークではお目にかかれない内容の催し」「素晴らしい演奏と舞をありがとう」など感動の声が聞かれた。
 主催者らは「雅楽カリキュラム」で楽器購入の資金に充てるために販売する特製Tシャツも発表、支援を呼びかけた。Tシャツは横笛吹きと「GAGA OVER GAGAKU(雅楽に夢中≠フ意)」の文字をあしらったイラスト入り。法衣・装束の老舗「井筒」(京都)社長、井筒與兵衛氏がデザインした。
 なおオープニングではドナルド・キーンセンター所長のグレッグ・プルフフェルダー氏と、中世日本研究所所長のバーバラ・ルーシュ同大学名誉教授が挨拶した。

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バーバラ・ルーシュ中世日本文化研究所所長のオープニング挨拶(要旨)

 今宵聞く音楽のいくつかは1250年前、日本の中心、奈良の都の儀式で演奏されたのと違わないのだと考えると、思わずゾクゾクとしてしまいます。時空を超えてアメリカの文化の中心、NYでその素晴らしい音色と舞が披露されます。このほど当大学が「雅楽邦楽カリキュラム」開設によって欧米での当分野におけるイニシアチブを取ることになったのをキーン教授も評価するはずです。記念日では過去を振り返りがちですが、我々は未来を見据えたい。同講座の出発の年でもあるのですから。今宵は皆様を一流の雅楽へとお誘いします。サプライズもあります。我らが若きパイオニア、雅楽カリキュラムの学生が加わり、初の公開演奏を披露するのです。赤ん坊≠フ第一歩の目撃者になってあげてください。

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コロンビア大に新設「雅楽カリキュラム」
 指導の寺内直子教授に聞く



 音楽学部に新設された新授業「雅楽カリキュラム」。現在、東アジアの人文・歴史系を専攻する学生なども含め15人ほどが受講している。指導するのは、本カリキュラムのために客員として派遣された神戸大学国際文化学部の寺内直子教授。自身の楽器に関する専門は「平家琵琶」だが、日本の文化庁や中世日本研究所の助成による七カ月の任期中、伝統音楽の基礎・実技を伝えるために奮闘している。
 同教授によると、学生の感想は「難しい」と「面白い」が半々。多文化の入り混じる「国際都市」を反映してか、学生も専攻以外にもう一つ、他文化の対象に挑戦してみる傾向があるそうだ。予想外の苦労は「それなりの身体的な身のこなし方から教えなければならないこと。そして何より楽器が足りないことです」
 雅楽に触れてまだ数カ月の学生たち。今演奏会での共演について同教授は「滅多にない、ありがたい機会。これをきっかけに学生がいっそう上達に努力してくれれば」と話した。

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