「来たときよりも美しく」
今年三月初旬、ISF(インターナショナル・シントウ・ファウンデーション)ニューヨーク・センターのオフィサー交代のため、ニューヨークに出張したときに滞在したホテルでの話。
一週間あまりの滞在なので、自炊ができるキッチンや仕事に便利なオフィススペース付きの部屋があるホテルを利用したのだが、3日ばかりたった朝、廊下でハウスキーパーに出会った。彼女は私に「あなたは日本人でしょう」と尋ねた。「そうですが、なにかありますか?」と問い返したところ、「お部屋の使い方がニートなのはたいてい日本人で、清掃がやりやすい」と言う答えだった。ニート(neat)は、『きちんとした、さっぱりした、几帳面な』という意味の言葉だ。自分としては、どこのホテルでも、きちんとした使い方を心がけてはいるのだが、面と向かってこんなことを言われたのは、はじめてだった。これは、このホテルに私より前に泊まった日本人がニートな人たちだったということで、「旅の恥はかき捨て」ない先人がいることがうれしかった。
いまでは利用することはないが、若いころはよくユースホステルや青年の家に泊まった。そこでは、「来たときよりも美しく」して帰ることがルールになっている。寝具の出し入れから食器洗い、朝の掃除など、すべてがセルフサービスである。風呂に入っても脱衣がみだれないように、後から入る人がいやな思いをすることのないように、気を付ける。そうしたことは、昔は親がやかましく言ったものだ。それが身についていると、自然とホテル住まいでもニートになる。そうした行為が自然体でできる人たちがニューヨークで、あるいは世界の各地で日本人の評判をよくしていると思うと頼もしい。
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