神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 出雲大社神枯殿

社史の諸相を感じる空間

遷宮奉納品・出土品から大社を知る諸資料まで

 「神こ(示古)(しんこ)」とは神の恵み、幸を授かること、そして「神こ殿」はその御神慮に感謝しつつ神とのむすびのご縁を授かりたいと願う人々の憩いの場であるのだという。
 拝殿に向かって右手にある神こ殿の一階は名の由緒が示すがごとく御縁を授かる人々の祈祷受付所、二階が宝物殿になる。出雲大社の宝物館は明治十二年開設の寄附品陳列所に始まり、現在、大正三年開設の彰古館と昭和五十六年開設の神こ殿がある。
 奉納品、出土品、そして太古より今に至るまで神事に使われた祭具などが納められ、大社と大国主大神に寄せた人々の奉謝の念を伝えている。
奉納品では、平安末の御遷宮に際し調製された「秋野鹿蒔絵手箱」(国宝)など第一級品がある。黒漆地に蝶貝螺鈿で秋の野に遊ぶ鹿の親子と、小鳥を描出している。また、「赤絲威肩白鎧」は足利義教の着用を義政が、「豊臣秀吉佩刀」は側室・淀君と豊臣秀頼が、それぞれ当時の遷宮に際して奉納したものだ(いずれも重文)。
王道の再興成就を願った後醍醐天皇宸翰の宝剣勅望の綸旨も歴史の迫真を伝える(重文)。出土品のうちでは、境外摂社・命主社の境内から発掘された「銅戈」「硬玉製勾玉」(いずれも重文)の美しさに魅せられる人も多い。
   これら史上稀有の宝物のほかにも、同大社に関心を持つ人にとって興味深い展示が多数ある。
滅多に開けられることのない御本殿の八雲の天井絵――これを九分の一に縮小した模写(地元の画家、小豆沢禮氏作)。「実際の天井絵は描かれたときのままの色合いのように鮮やか」と担当者は話す。
   「本殿座配の図」は殿内での多くの社人たちの配置を表した図で、心御柱、宇豆柱、正面から東にずれた向拝・階梯・扉、殿内の板壁、その奥の内殿に横向きに鎮座する大神、大神の前に座す五神など、同大社独特の殿内と座配の様子が分る。
   高さ24メートル、力強い大社造りの御本殿に驚嘆し、境内に生命の息吹を受けたのちに入る神R殿は、出雲大社の歴史の諸相を改めて深く感じさせてくれる空間である。

▼開館8時半から16時半(入館は16時まで)
▼大人150円、高中生100円、小学生50円
▼島根県出雲市大社町杵築東195
▼電話 0853(53)3100

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