神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神社界あれこれ

神職がプランターで稲作りに挑戦 ―大阪府神社庁
まずは神主自身が体験を

 大阪府神社庁(寺井種伯庁長)では教化委員会のメンバーら20数社の神職が鉢植えプランターでの米作りに挑戦している。稲作の思想は神社の祭祀に密接につながっているが、氏子の教化以前に都会育ちの神職自身が米作りの実体験をしたことがないため、まずは自分たちがささやかながらも稲の成長を見る経験をしようと始めたもの。
 交野市の星田神社(佐々木久裕宮司)の苗代で発芽させた苗を各人が持ち帰り、プランターに植えて育てている。同神社庁の芦立幸正参事によると、「何しろ皆やったことがないので苦労している。土の問題もあるし、水もただやればいいというわけでもない」
 庁舎に隣り合う坐摩神社(大阪市中央区)の渡邉紘一宮司(同神社庁副庁長)と北岡忠澄権禰宜はオフィス街に囲まれた境内ながら、すでに4年前から火鉢を使って苗を植え育て、試行錯誤の結果、年を追うごとに実績を上げており、そのアドバイスなども参考にしての「農作業」が続いている。
 教化委員会が中心となっていることからも分かるとおり、将来は府内各神社の氏子地域の人々や子供たちがこの体験に関わる場面も想定しての事業でもある。
 「この秋、どんな成果が出るか分からないが、刈り取って少しでも神前にお供えすることができれば上出来。稔りがあれば、残して貯めて、翌年の種籾にもできる」(芦立参事)と参加者らの希望は膨らんでいるようだ。




「神社境内は代替医療の場に最適」
大阪・鶴見神社宮司で鍼灸整骨院院長の花谷幸比古氏

 大阪市鶴見区に鎮座する鶴見神社は「お宮のはり・灸・ほねつぎ」をうたう医院としても知られる。正式名称は鶴見鍼灸整骨院。だが院長の花谷幸比古宮司は「神社であるからには、医院ではなく養生所を、そして神道と融和する鍼灸を目指したい」と語る。
 患者には境内の神木を眺めながら、ベッドで鍼灸を受けてもらう。「生き生きと、すがすがしくリラクゼーションしてもらう。自然と調和するのがお宮ならば、人間の体内も宇宙そのもの。神道は気と魂の文化だから、生命の息吹も自然から入ってくる」
 「神社の境内はまさに代替医療の現場にふさわしい」との信念と精神で治療にあたる花谷宮司。その気さくな人柄もあいまって、「お宮の鍼灸」は口伝えに広がり、地元の人たちのほかにも、大相撲やプロ野球のスポーツ選手、芸能人、大学の講師などさまざまな分野からの「常連客」も多い。
 中国で東洋医学や風水学を学び、森ノ宮医療学園専門学校の講師も務める。関連の先端技術や鍼灸理論を導入しつつも、「健康・医療と鎮守の森の思想を結びつけたい」と意欲を見せている。


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