神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道国際学会たより


伊勢国際宗教フォーラムが発足
設立大会でダライ・ラマ法王が特別講演
宗教間の調和や人間の使命を語る

本会の薗田会長も基調発題・ディスカッションを


 伊勢を起点に宗教関係者が集い、現代社会に新たな価値観を示そうという「伊勢国際宗教フォーラム」がこのほど発足。昨年11月18日、設立大会が伊勢市の皇學館大学で開かれ、チベット仏教の代表者、ダライ・ラマ法王が「宗教と調和」と題して特別講演を行なった。そのなかで法王は宗教間の調和を深めるアプローチについて、「異なった宗教的見解、物の見方を知ることで私たちは深く、人間のために働くことができる。善き資質を高めていく目的に向かって、様々な方法論が存在するのは素晴らしいこと」と話し、宗教同士の争いをなくす方途や人間の使命を説いた。
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 大会ではまず、千田稔・国際日本文化研究センター教授が「日本人の信仰と基層文化」と題して基調講演。続いて本会の薗田稔会長(京大名誉教授)のほか、木村清孝・東大名誉教授、宮家準・慶大名誉教授が基調発題を行なった。さらに「提言」として吉川竜実・神宮権禰宜らが発言した。引き続いてダライ・ラマ法王が記念講演を行ない、これを受けて同法王を中心に、基調発題・提言の各氏が加わりディスカッションを展開した。司会は櫻井治男・皇學館大教授。なお、開会にあたり初代代表に就任した岡田重精・皇學館大名誉教授は「対話と協調の精神によるこのフォーラムから世界平和への指針を提起していきたい」と決意表明。これに対し、上杉千郷・皇學館理事長や田中恆清・神社本庁副総長ほかが祝辞をおくった。また、閉会式ではシンガーソングライターのイルカさんも登場して、来場者全員が「ふるさと」を合唱、「フォーラム」の発展を念願した。
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 講演の千田氏は日本文化の基調として「細やかさ」を挙げ、神道精神との関連を指摘。「神は聖なる存在だから、清浄なる空間でお迎えした。神の場を細やかな心で作り上げた」とし、「万葉集」や王朝文化、神社建築などに、細やかさ・清浄さ・簡素さを大切にした日本人の心性を汲み取った。そして「我々の歩む道はここに尽きる。細やかな心を取り戻すことが必要だ」と語った。
 基調発題で神道の立場から話した薗田氏は神道について、「教団宗教ではない宗教文化」と解説。「明確な教義がないなかで、諸問題にどう働きかけるか――古典類に学びつつ、内在する生命倫理を考えたい」と提起した。そして「結びの霊力」「神の恵みに感謝する命の受け継ぎと生命観」などをキーワードとした。
「宗教と調和」と題して講演したダライ・ラマ法王は調和を築くための人間の「使命」について、「社会の一人として『人間性』に真摯な態度で関心を寄せることが大切」と説示。そして「人間の持っている善き資質を私は『人間価値』と呼ぶ。この価値を促進させることが大切だ」と語った。
  また、もう一つの「使命」を語るなかで法王は、「様々な宗教が互いの親密な関係を築かねばならない。それは可能なことだと私は信じる」と明言。「愛、慈悲、許し、そして忍耐といった大切なものは、すべての宗教において共通のメッセージとして発せられている」と理由を述べた。
 そして、宗教間の相互理解への方途について法王は、「異宗教の人たちが集うと共通項だけを話したがるが、それは間違い。異なった見解、相対する物の見方を知ることによってこそ、私たちはさらに深く、人間のために働いていくことができる。善き資質を高めていく同じ目的に向かって様々な方法論が存在していることはすばらしいことだ」と指針を示した。




神道国際学会平成19年度第2回理事会


 神道国際学会の役員は理事16名と監事1名の17名で構成され毎年2回、春と秋に理事会を開催している。
 平成19年度の第2回理事会は、第2回神道国際学会理事専攻研究論文発表会を翌日に控えた、平成19年11月16日(金)午後4時から6時まで、伊勢市の伊勢パールピアホテルで開催され、理事11名と監事1名が出席した。
   本会の定款の定めにより、理事長の議長により議事が進み、第一議題では、平成19年度の本会の事業・活動が時系列で報告され、満場一致の承認により、平成20年度の社員(会員)総会に付議することが決まった。
   第二議題では、すでに社員総会の議決を経ている平成20年度の事業・活動が再確認された。第三議題では、神道文化の国際的発展に貢献するという本会の主旨に副って、神社界に英文資料の作成を呼びかけ、本会がその支援をすることが理事の間から提案されその方策を具体化することになった。
  次回の理事会は第12回神道セミナーの前日、平成20年2月23日に、神戸で開催される。


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