彩色の家庭「神棚」を制作する
埼玉県三郷市の神職、鈴木重臣さん 考古造新――厳粛さと清新さで神道教化
青や渋茶色の屋根、朱色の欄干、黒色の扉……。鮮やかな配色をほどこした家庭用の宮型、いわゆる神棚が拝殿隅のガラスケースに並ぶ。埼玉県三郷市戸ヶ崎の香取神社。古くから伝わる戸ヶ崎の獅子舞で近郷近在に知られる古社である。
宮型といえば白木の生地のままが通例だが、このカラフルな神棚はインパクトがある。「これだったら家で奉斎したい」と所望する参拝者も多いらしい。だが、この宮型、神具店には見当たらない。制作したのは同神社の禰宜、鈴木重臣さん。まさに神主による手作りの神棚なのだ。
「教化の一環になればと、試みに始めたのですが、量産が難しいので今は注文がないと……。神主としての本務もありますし」と鈴木さん。3年前に組み立て、細部の仕上げが残り未完成というものもある。「それでも待つ、という氏子さんに、ほぼ原価で、お頒ちしています」
制作のきっかけは平成13年、埼玉県神社庁が神宮大麻の頒布推進と神道教化の具体策を話し合った際、同神社庁の神道青年会会長だった鈴木さんらが色つき神棚≠提案した。
「白木が伝統」だとして、色よい反応はなかったが、同15年に青年会が50周年を迎えたとき、会長退任後も記念事業実行委員会の委員長に残っていた鈴木さんは、記念事業品として製作・展示した。すると、県内のある神社が「わが社でも頒布したい」と八基を引き取り、その後、多くを氏子崇敬者たちが購入していった。
「お受けいただいた方から『途端に運気が高まった』とか、感激の言葉があったのは嬉しかった」という鈴木さんは「まずは一軒でも多くの家で神棚を奉斎していただきたいという思いがあった」と真意を付け加える。
仕事が終わって深夜、自宅の車庫での作業。暖房を入れると埃が付くので、冬は、手がかじかむ中で工具やハケを持つ。塗装は10数工程。その間の乾燥にも時間をかける。顔料はじめ材料費もばかにならない。それでも鈴木さんは「原価でやるのも、神主が精魂を込めるのも、使命と思うから」
さらにアルミの排気ダクトを材料に巨大なヤマタノオロチを作り、神話世界のオブジェを境内に飾った。七五三や正月に参詣の親子が、その前で記念撮影する姿をしっかり目にしている。
「きっかけ作りに神主が動くか動かないかは大きな分かれ目。ポイントは外していないつもりです。厳粛さと、時代に合う清新さ。両方を持っていたい」。もともと造形や物作りが趣味という鈴木さんの好きな言葉は、ある陶芸家の言った「考古造新」である。
山折氏を招き「神仏習合」講演
創立40年の神時問研
20周年の平成神道研との合同企画も視野に
神道時事問題研究会(代表幹事=片山文彦花園神社宮司・山本雅道高円寺氷川神社宮司、東京)の例会が1月30日夕、東京・新宿の花園神社で開かれ、前・国際日本文化研究センター所長の山折哲雄氏が「神仏習合」と題して講演した。
同研究会は今年、設立40周年を迎えており、やはり片山、山本の両氏が代表を務める平成神道研究会も20周年であることから、両研究会は合同で1年間にわたって、自然、環境生命、神仏習合をテーマに議論を深める事業を展開することにしている。今回の山折氏の講演は、同事業のスタートを告げる「総論」の意味合いをもたせた。
講演で山折氏は「『神仏習合』は翻訳的で、もう古い。私は、日本人の感性に合った『神仏和合』にしようと言っている」と話し、土着の信仰と外来の仏教が結びついた「和合」のもっとも象徴的な舞台は「山」だったとして、山岳信仰によせる日本人の精神構造を明らかにしていった。
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