神道国際学会会報:神道フォーラム掲載 |
From Abroad - 外国人研究者紹介 劉 岳 兵 氏 南開大学助教授 |
近代日本に影響を与えた儒学 中国哲学や近代哲学を学び、とくに南開大学大学院の修士課程では「現代新儒学」と呼ばれる中国現代の思想を専攻した。 修士課程後の1996年、日本留学のチャンスが訪れ、立教大学で研究生活をおくる。そのとき、日本において儒学がいかに吸収され、いかに解釈されているかという同時代的な課題に関心を持った。「多くの文献に当たり、そして非常に多くの資料を抱えて帰国の途についたものです」 その後、中国社会科学院の博士課程に進む。「せっかく集めた日本近代儒学に関する資料ですから、それを読み込んで、日本に与えた儒学の影響をより詳しく解明しようと思ったわけです。恩師もその研究に意義を認めてくれて、非常にありがたかった」 東京大学への留学をはさみ、論文「日本近代儒学研究」で博士号を取得。2001年、浙江大学日本文化研究所に奉職した。「浙江大学は研究プロジェクトが盛んで、シンポジウムを催して、日本の学者を呼んだりする事業にも関わったことが心に残っています」 引き続き、日本の近代化における儒学思想の意義や関係性、派生する諸問題について研究を継続し、編著『明治儒学与近代日本』(2005)、著書『中日近現代思想与儒学』(2007)をまとめた。 2004年からは南開大学に移り、現職。その間、日本学術振興会の外国人特別研究員として再来日。大東文化大学の客員研究員も兼ね、2年にわたって滞日し、先ごろ帰国したところである。 「一口に、儒学が日本に与えた影響、といいますが、時代によって解釈が違う」といい、その時々の時代背景や社会状況と関連づけ、日本人が儒学から何を読み取り、何を取り込んだかに研究の視点を当てる。「文人、政治家、財界人などによっても異なるし、論語が尊ばれた時もあれば、兵法が重視された時代もあった」 また、これら研究からの意外な副産物として、近現代における日中相互の思想的な文化交流史の一端が理解できたことも強調する。「歴史は複雑です。色々な側面がある。学術的な概念や方法も大事だが、対象そのものが分かっていないと、良い理論が無駄になる場合もある。研究対象にぶつかって、細かく見て、そして全体像を理解して……。真実に対して客観的に、貪欲に研究を続けたい」 立教大学への留学時代は一時期、ラーメン屋でアルバイトをし、はたまた大学や研究機関で文献や書籍に没頭し……と多忙な学生生活だったと思い出も語った。 |
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