神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
「日本思想文化研究」優秀論文授賞式開催


中国で日本文化の研究すすむ 杭州市浙江工商大学
中国語で神道の教科書刊行
ニューキャンパスに日本文化研究楼の完成間近か

 中国浙江省の省都である杭州市は、美女にたとえられる西湖を中心とした風光明媚な観光地。ここに1989年に浙江省初の日本研究機関として杭州大学に設立され、現在は浙江工商大学に移設されている日本文化研究所(以下、日文研)がある。同研究所には神道国際学会理事である王勇教授が所長を務めるほか、そうそうたる研究者が顔をそろえており、日本文化の研究拠点として、中国全土でも自他共に許す中心的役割を担っている。神道国際学会はおよそ10年前から同研究所と協力関係を樹立し、神道大系などの文献の寄贈や、日文研10周年には記念の能楽公演を杭州で開催したりしているほか、中国での活動拠点として日中歴史文化アカデミーを杭州においている。
 3月15日、梅田善美神道国際学会理事長は、同大学を訪れた。日文研の客員教授でもある梅田理事長の今回の訪杭の目的は、第9回をかぞえる「日本思想文化研究」論文コンテストの優秀論文授賞式に参列するためと、同研究所で特別講義をするため。
 16日午後、日文研の会議室で開かれた特別講義では、広島大学から招待された李国棟教授が「天孫降臨と越国の王子」と題して、日本の天孫であるニニギノミコトは越の国から渡来した王子ではないかと自説を披露。梅田理事長は「教派神道の発生と現状」をテーマとして、現代の日本の民衆宗教のなかで大きな役割を担う教派神道について説明した。参加者は教授陣、院生、学生、部外者も含め約40人で、質疑も活発におこなわれた。
 その後、同じ会議室で「日本思想文化研究」優秀論文の授賞式がおこなわれた。今回の応募者は全国から17名。日文研が一次審査をして10点にしぼり、それを中国で一流の5人の学者が最終審査をして、受賞者が決定された。当日は牟方贇さんの司会で、王宝平教授が入賞者を発表、王勇教授らにより、受賞者に表彰状と賞金が贈られた。
 受賞者を代表して2等賞(1等賞は該当者なし)をうけた北京語言大学の銭婉約教授は、自分がはるばる授賞式に参加した理由は「日文研を初めて訪問するよい機会と考えたこと、天国と称される杭州の春を満喫できること、この賞の創設者である梅田先生はじめ関係の方々に謝意を表したかったこと」の3点であり、今までにも論文コンテストに参加したことがあると述べ、王勇教授率いる浙江工商大学の日文研は国内外の学術界でますます重要な影響を与えるようになってきていると讃えた。
 式の最後に梅田理事長は、日本思想文化研究論文コンテストが年々盛大になっていることに対して関係者に謝意を述べ、同様のコンテストが、英語、中国語、ロシア語に続き、今年から韓国語でもおこなわれることを発表、そして来年は10回という節目を迎えるので、ぜひ優秀論文を翻訳して日本人が読めるようにして欲しいと要望した。
 浙江工商大学では、現在、銭塘江畔にある下沙の広大なニューキャンパス内に、日本文化研究楼を建築中である。この研究楼には日文研はじめ、王宝平教授が院長を務める日本語言文化研究学院が入居する。また神道国際学会の活動拠点である日中歴史文化アカデミーもスペースを確保する予定。来年夏には新装なった研究楼で開設記念の行事を開催することも検討している。
 また、中国の日本文化研究として画期的な出来事は、昨年末に著名な研究者である王金林教授著作の『日本神道研究』が中国語で出版されたことだ。王勇教授によれば、この本は中国各地で日本研究の教科書として使用されるとのこと。本書刊行に際しては神道国際学会も経済的な協力をした。

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