斎王と斎宮の全貌を知る
伊勢に繰り広げられた王朝文化のみやび
歴代天皇に代わって神宮に仕えるため、伊勢の地に赴いた斎王(いつきのひめみこ)という皇族女性がかつて存在した。天武の御世から南北朝動乱期までの約660年間。未婚の内親王あるいは女王のなかから占いで選ばれ、当地に派遣された。
斎王は何年にも亘って伊勢国に滞在するため、斎宮(さいくう)という宮殿が営まれた。神宮から北西へ10数キロ、現在の多気郡明和町の地である。斎王の宮殿・内院を中心に、官人らの役所(斎宮寮)など、百余の建物が建ち並び、都さながらの景観だった。
斎宮跡は今、国史跡に指定されている。東西2キロ、南北700メートルの広大な遺跡で、昭和45年以来、発掘調査が継続されている。
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斎宮跡の一角。広々とした公園に斎宮歴史博物館が建つ。展示室T「文字からわかる斎宮」、展示室U「ものからわかる斎宮」、「映像展示室」を中心に構成され、史・資料を閲覧できる「図書ホール」や「特別展示室」などもある。
展示室T・Uでは、斎王も登場する『伊勢物語』や『大和物語』など、王朝文学や資料から斎王・斎宮の世界を垣間見るとともに、斎王制度の発生から実際の姿、生活、そして斎宮跡の発掘までを知ることができる。
斎王の乗る輿「葱華輦」の模型や、6月・12月の月次祭と9月の神嘗祭で神宮に参拝する斎王の様子を表現したマジックビジョン、土器の復元パズル、斎宮を探訪するコンピュータ・グラフィック等々、視覚と体感で楽しみながら学べる。
映像展示室では三本のハイビジョン映像を交互に上映している。うち「斎王群行」では、後朱雀天皇の世の良子内親王をモデルに、斎王の選定から潔斎、そして都から伊勢・斎宮までの旅を再現し、「群行」に随行した貴族らの姿をありありと映し出す。
都から離れた伊勢で展開された王朝文化のもう一つのみやびな世界。天照大神への奉仕という厳粛な祭事にのぞむ人々の心情。日本の伝統文化の深みと美しさに、心を躍らせられる空間である。
▼9時半から17時(入館は16時半まで)
▼月曜休館(祝休日の場合は開館し、翌日休館)
▼一般330円、高・大学生220円、小・中学生は無料
▼三重県多気郡明和町竹川503、電話0596(52)3800
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