『日本神道研究』 本書は浙江工商大学日本文化研究所が企画した「中日関係史研究叢書」の一冊として、2007年12月に上海辞書出版社より刊行されたもので、中国の研究者による日本神道研究の画期的な著作であると言えよう。
著者の王金林氏は、天津社会科学院中日学術交流センター主任、中国日本史学会名誉会長、浙江工商大学日本文化研究所客員教授など、多様多彩な肩書きをもち、北の天津と南の杭州を根拠地にして活躍されている中国屈指の日本研究者である。氏は長年にわたって日本史、中日関係史、中日文化交流史の研究に従事し、『鑑真』(上海人民出版社、1979年)、『簡明日本古代史』(天津人民出版社、1984年)、『古代の日本』(六興出版、1986年)、『奈良文化と唐文化』(六興出版、1988年)、『邪馬台国と古代中国』(学生社、1992年)、『弥生文化と古代中国』(学生社、1992年)、『漢唐文化与古代日本文化』(天津人民出版社、1996年)、『日本天皇制度及其精神結構』(天津人民出版社、2001年)、『日本人の原始信仰』(寧夏人民出版社、2005五年)など多数の著書がある。
1995年に完成された『日本天皇制度及其精神結構』を契機に、日本神道の研究に力を入れるようになり、2001年に浙江大学日本文化研究所客員教授に就任されてから、本書執筆の準備に取りかかり、2004年に一ヶ月あまり日本で資料調査を行い、5年間をかけてようやく本書を書きあげた。
著者も指摘されているように、日本という国を深く理解するために、神道は避けて通れない領域である。神道の歴史的源流から、日本の伝統的文化や原始信仰、時代ごとに変化する人生観・宇宙観、固有文化と外来文化の習合と衝突などが見てとれるし、また21世紀の中日両国関係をめぐる諸問題の認識と解決にも示唆が与えられる。本書は方法論を述べる序論につづいて、以下の七章と終章から構成される。
第一章 原始神道の構成要素、古代日本人の宇宙観
第二章 伊勢神宮を核心とする皇室神道及びその祭祀制度
第三章 神道と仏教の融合・「本地垂迹説」
第四章 鎌倉・室町時代における伊勢神道・吉田神道の形成とその思想
第五章 儒教と結ばれた儒学神道の思想
第六章 国学と復古神道及び尊皇攘夷活動に果たしたその役割
第七章 国家神道の形成と教義、第二次大戦中の朝鮮・中国における神道の活動
終 章 GHQの神道政策、戦後神道の各教派、靖国神社の国家化とその実質
著者が各章の論述において神道の生まれ育った土地である日本列島を見つめているだけでなく、中日文化交流史の視点から中国の思想が神道の発生・成長に与えた巨大な影響を視野に入れている。それに、本書の神道研究には、宗教・歴史・哲学・考古・民俗などさまざまな知識が動員され、著者の博学ぶりを見せている。
(浙江工商大学日本文化研究所 許海華)
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