「一の宮巡拝会」まもなく発足十年
アメリカで対話交流会―巡拝ほか新たな活動も 「神道の心と共生文化を国内外の人々に知ってほしい」
代表世話人の関口行弘さん
各国一の宮を巡る全国組織「一の宮巡拝会」が来年、発足10周年を迎える。同会の代表世話人で、アートディレクター・画家の関口行弘さん(兵庫県)は「無我夢中でやってきましたが、節目ということで、いい仕事≠したいなと思っているところです」。関口さんは、初代代表世話人の故・入江孝一郎さんと二人三脚で、設立当初から会を盛り立ててきた。
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会員は現在360人。年一回の交流会と、全国を5つに分けてのブロック交流会を開く。会報や年度雑誌を発行し、「御朱印帳」を用意する。一の宮「108社」を巡る際の交通機関と問い合わせ先を網羅した「参拝参考資料」も好評だ。神職による「全国一の宮会」との連携にも力を置いている。
壱岐国一の宮・天手長男神社への参拝を契機に平成15年には「元寇の役・敵味方鎮魂地球平和祈願祭」を斎行。また同18年には「自他共生」をテーマに奈良で公開シンポを開催するなど、国内外の人々と協調しての諸活動を展開してきた。
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昨年、伊勢国一の宮・椿大神社のアメリカ分社(シアトル)における平和祈願祭への参加が実現した。対話交流会を開き、神道や仏教に基づく共生思想の意義を語り合った。「交流会で宮沢賢治の詩を英訳して朗読披露したんです。賢治は仏教的であるとともに神道的でもある。アメリカの人たちから『日本の持つ思いやりの心に共感した』と後日メールをいただいた」と関口さんは感激を語る。「神道は布教に拘らない。それはそれでいい。でも神道に通じている精神、その良さを外国の人に知ってもらうのは大事だと思う」
10 周年に当たって、ヨーロッパでも対話交流会を、との声も出ているそうだ。
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巡拝に関しては、会員によって参加意識も多様。関口さんは「ひとまず広い意味での文化活動でいい」という。「やがて人智およばぬ根源を感じ、自然の素晴らしさを知り、精神的に深まっていく人もいる。文化教養で貫く人もいるでしょう。でも少なくとも、巡拝していると、人にも環境にも見返りを求めない思いやり、優しい気持ちが湧いてくることは確かなんです」
一の宮を核としつつ、多くの神社や地元の氏神、さらには仏教寺院への崇敬意識を広めたいという。そして、日本の共生文化を国内外を問わず再認識してもらう。「神主の方々のみならず、われわれ外部の者たちがやれることがかならずある」と関口さん。今、「巡拝会」の新たな歩みを模索しているところだ。
会報「神事芸能通信」を創刊
いにしえの筑紫舞を伝える 神戸神事芸能研究会
筑紫舞の研究と伝承を行なう神戸神事芸能研究会(代表=鈴鹿千代乃・神戸女子大学教授)はこのたび、会報「神事芸能通信」の発行を始めた。
同会は昭和63年に始動し、現在は神戸の二宮神社と、名古屋の日吉神社(名古屋教室)を稽古場として活動を続けている。あわせて各地の神社への筑紫舞の奉納も行なっている。
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筑紫舞は、かつて存在した傀儡(くぐつ)という一族が伝えた神事芸能で、神に捧げる「神舞」と、祭礼の時に神社境内で人々に披露する「クグツ舞」に大別され、さらに祭神や地域によっても舞や舞ぶりが異なるという。そして、その振りや所作すべては祓えとしての意味を持つとのこと。
傀儡族は定住生活をせず、街道をさすらい、祓えの芸を演ずることで暮らしを立てる芸能集団で、やがて時代とともに今様、能、狂言、人形浄瑠璃、歌舞伎舞踊など、さまざまな芸能の大成に大きな影響を及ぼしたという。
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同会では、この筑紫舞に込められたいにしえの人々の思いを後世に伝えようと会員が稽古に精進している。会報「神事芸能通信」では、その活動報告とともに筑紫舞の解説や研究成果などを紹介していくという。代表の鈴鹿氏は「通信」発刊に関連して、「伝承という意味でも若い人たちが着実に育ってきた。筑紫舞に理解を示す人も増えてきたので、いっそう活動を充実していきたい」と今後への意欲を話している。
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