神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
From Abroad - 外国人研究者紹介

タツマ・パドアン 氏
イタリア国立カ・フォスカリ大学(ベネチア)大学院生

   中世日本の神道説や神話、神仏習合の思想を中心に日本文化の研究を進めている。近年はとくに真言密教に立脚した両部神道や、修験道の側から説かれた神道書『大和葛城宝山記』に焦点を当てる。
   「日本の神話は面白いし、研究対象としても興味深い。でも、とくに中世の神話は神道、仏教、陰陽道などの儀礼の要素が複雑に入り組んでいて、範囲も大きくて、理解していくのは非常に難しい」と話すが、その解り難さをありのままに受け止めることで、中世日本における宗教思想の実態、そして変遷を掴み出そうとしている。
   両部神道による伊勢神宮の解釈にしろ、中世神話における国土の起源・開闢の考え方にしろ、もともとの日本神話とは様相が異なる。
 「よく言われる『日本書紀』『古事記』などの神話からの一般的なイメージとは違い、土着の神話や縁起説や密教の影響が加わえられている。両部神道の成立時期は分かっても、色々な観念の影響の仕方や発展の過程には謎もあって、研究のし甲斐があります」
 『宝山記』の解読にあたっては、葛城山や金剛山へ現地調査にも出かけた。「実際に、今でも山伏が修行をしているわけですが、観念だけでなく、修行や儀礼も十三世紀のそれとは変化していることがわかります」
古代から中世へ、中世から近世・近現代へと、日本の宗教や文化の習合的なあり方や変遷を捉えつつ、専攻する中世神話の深耕に努力しているところである。

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   子供の頃から神話全般に興味を持ち、母親が日本人ということもあって、大学では日本文化の全般を学んだ。大学院に進んでからはとくに日本神話に焦点を絞った。先ごろも4ヵ月ほど滞日し、早稲田大学で史料の収集と読み込みを行なった。
「研究というより勉強中というところですが、成果があがるよう頑張りたい」。本学会が主催する神道エッセイコンテストの英語部門で、2年連続で一位を受賞したこともある。日本文化に対する欧州での知見がさらに拡大するためにも、若き宗教研究者としてますますの活躍に期待がかかるところだ。
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