神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
地道な活動が次第に実る
神道国際学会ロシア連邦事務所報告


 神道国際学会では2000年に、ロシア連邦内の神道研究者・日本文化研究者の支援のためにモスクワ代表部を設立、現在はロシア連邦事務所と名を変えて活動をしている。モスクワ市内クレムリンの前という絶好の立地条件にあるモスクワ国立大学付属アジアアフリカ諸国大学(以下AA大学)内に開設された事務所では、所長にエリゲーナ・モロジャコワ教授(ロシア科学アカデミー東洋学研究所日本研究センター長)を迎え、フェジアニナ・ラーダ女史が事務主任として働いている。
 ラーダ女史によれば、ロシア連邦事務所の活動は、ロシア内でもしだいに知られてきているという。たとえば、日本大使館や国際交流基金でも、モロジャコワ所長の肩書きに、必ず神道国際学会ロシア連邦事務所所長を付け加えるようになった。それは2年前ではありえないことだという。ここでは、知名度をあげつつあるロシア連邦事務所の活動のいくつかを紹介しよう。

神道エッセイ・コンテストが確実に定着

 ロシア連邦事務所では、毎年、ロシア語による神道エッセイ・コンテストを開催しており、本年度は6月初めに締め切られた。モスクワ市・ノボシビリスク市・ベラルーシから送られてきた7点の論文は、モロジャコワ所長をはじめとする3人の審査員の厳しい審査を経て入賞が決定されることになっている。
 昨年度のエッセイ・コンテストの受賞者とテーマは下表のとおりで、10月19日には、モスクワ市のロシア国立図書館付属東洋文庫で、授賞式が開催された。授賞式が行われるのは今回で3回目になる。
 式では最初にモロジャコワ所長が参加者を紹介。東洋文庫副所長のメラーニナ女史が東洋文庫を代表して挨拶をした。モロジャコワ所長は、受賞エッセイについて批評した後、お祝いの言葉とともに賞状を手渡した。受賞者のエフトシェンコ女史(ノボシビルスク国立大学)、ビコフ氏(ロシア国立人文大学)、ボロズヂィナ女史(モスクワ国立国際関係大学)が受賞の喜びを語ると、ロシア連邦日本学会会長であり今回のコンテストの審査員長であるメシャリャコフ教授がお祝いの言葉を述べ、若い受賞者たちがロシアにおける神道研究にできるだけ貢献をしてくれるようにと希望した。
 事務所では過去3年間のエッセイ・コンテストの受賞作品を本にして出版することを企画している。

隔月に日本文化を紹介「影」クラブ

 隔月に開催される日本文化を紹介する「影」クラブの活動も活発だ。開催場所について、昨年から国立の東洋諸国美術館と契約ができ、やりやすくなった。
 昨年の9月25日にはインターネット週刊ジャーナル「Japon.ru」の編集長でイメージ学アカデミーの日本センター長であるクラノフ氏が「日本史における生命の起源―古事記にもとづいて―」、10月23日にはロシア国立人文大学東洋文化・古典古代研究所上級研究員のディアコノヴァ博士が「俳句における四季の言葉」、11月27日にはロシア国立人文大学東洋文化・古典古代研究所のメスチャリャコフ教授が「日本文化における「家」という考え」について、12月25日には、モスクワ国際関係大学のストプラン歴史学博士が「日本における新年―伝統と現代状態」について講義をした。 
 今年に入ってからは、2月26日に、国立芸術学大学のアナリナ教授が、東洋諸国美術館で「神道と日本伝統的な芸術」、また4月22日には、同美術館研究員のユスポヴァ氏が「18―19世紀浮世絵と年中行事」について講義をした。
 神道国際学会ロシア連邦事務所では、今後も引き続き「影」クラブを開催する予定で、こうした地道な活動により日本に対する理解が深まることを期待している。

書道展を諸団体とともに開催

 昨年8月31日、モスクワ市内のロシア国立東洋美術館で、北辰書道会を設立した森本龍石氏の「漢字のスペース」展が開会された。主催は同美術館、文化・マスコミ省(日本の文部省に当る)、在ロシア日本大使館、三菱電機と神道国際学会ロシア連邦事務所であった。
 午後5時から行われた開会式には、外交官、ジャーナリスト、日本学者など40人以上が招かれた。日本大使館からは情報部長、大使夫人などが出席。日本学者ではディアコノヴァ博士(ロシア国立人道大学東洋文化・古典古代研究所上級研究員)、アナリナ芸術学博士(国立芸術学大学教授)、『源氏物語』をロシア語に訳したソコロヴァ・デルシナ氏、メシャリャコフ教授(AA大学日本史・文化学科教授)、マズリク博士(AA大学日本語学科助教授)などが出席した。
 森本龍石氏とセドフ館長が挨拶をした後、ロシア国立東洋美術館のシシキナ主任研究員が、「書に宿る神々の力」のテーマでレクチャーをした。
 森本氏は、出席者の目の前で漢字を書き、出席者に寄贈したが、とくに神道国際学会ロシア連邦事務所には、「神」という漢字を書かれ寄贈された。
 またこの展覧会にちなみ、全国で「日本文化における筆・墨・紙」という、参加形式自由のコンテストが行われた。参加した15人全員には記念品として『日本:百貨店』(ロシア語、「Japan Today」社提供)とロシア語の『新古今集』(二巻、露日協会提供)が贈られた。

やりがいのある仕事に満足しています

 ロシア事務所事務主任のフェジアニナ・ラーダ女史は、こう語っている。
 「私は素晴らしい場所で内容のある面白い仕事をすることができ、本当に嬉しく思っています。仕事で色々な学者と出会い新しい知識を受けると、できるだけその知識を他の人に伝えたいと思います。昨年は中国での国際シンポジウムに参加できました」
 「事務所には神道のことを質問する電話がよくあります。たとえば『神道についてもっと知るには何を読めばいいか』『ロシアではどこで神楽を見ることができるか』などです」
 「2002年から続く「影」クラブは、ロシア人の神道に関する知識を広める大きな可能性があると思います。テーマによって人数が違いますが、もう何年間も通ってくる人もいます。現代に関するテーマはいつも人気があり、大勢の参加者があります」
 「どんな仕事でも、あまり面白くない部分もあるのは当たり前です。私の場合、登録機関に関する仕事、税務署への報告などですが、これをしないと面白い部分も現れません。私は朝からできるだけ早くこのような仕事を終えて、その後でもっと面白い仕事、すなわち神道に関するメールや電話のやり取りをしたり日本学者と相談したりします」


Copyright(C) 2007 SKG all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。