『遣隋使・遣唐使と住吉津』住吉大社編
本会も共催に加わった「日中交流1400年記念国際シンポ」の記録 昨年は聖徳太子による遣隋使派遣(607年)から数えて1400年ということで、日中両国で記念の交流行事が年間を通じていくつも開かれた。
5 月8、9両日には、発遣ゆかりの住吉津をかかえる住吉大社(大阪市)を会場に、「日中交流1400年記念国際シンポジウム」が盛大に催された。日中双方の政財・文化・学術界等で活躍の有志が実行委員会を組織して主催となり、神道国際学会も共催者の一員となった。
本書はこのシンポの記録をまとめたもので、基調講演やパネルディスカッション、分科会での研究発表の模様を盛り込むほか、特別寄稿も加えている。
遣隋使・遣唐使となって海を渡った人々の姿や大望、航海技術の実際などが討議され、住吉津・難波津の様子や住吉大社の役割なども浮き彫りにされる。さらには、招来された神々や音楽、漢詩、書芸など、諸文化の受容と、その変化も論じる。
当シンポは古代の歴史・地理・思想研究の最新成果が開陳された貴重な場となった。と同時に、日中友好・協力の拡大が望まれる昨今にあって、実際に両国の有志が一堂に会して交流し、先人の過去に学んだ有意義な機会となったのである。
▽236頁
▽2520円
▽東方出版=電話06(6779)9571
『日本の 大新宗教』 島田裕巳 著
社会と宗教の相互影響を捉える
いわゆる新宗教のなかから、ひとまず社会的に影響力のつよい10教団を取り上げ、教祖誕生からその死、あるいは権力による教団への弾圧、組織分裂、社会問題となった事件など、歴史と実態を紹介している。
たんなる教団解説にとどまらず、教団による社会への働きかけや影響など相互関係を捉えることで、日本人の精神、宗教観を浮かびあがらせているところに特徴がある。
もちろん教団擁護でも宣伝でもなく、かといって安易な教団批判でもない、新宗教の概要を知るための宗教学者による教養書だが、本書を味わい深いものに感じさせるのは、著者の長年にわたる宗教研究の積み重ね、その実績であり、先入観を排した宗教への目線なのかもしれない。
本書の最後で著者はこう語っている。「新宗教は時代を映す鏡としての性格を持っている。その鏡に何が映るのか。私たちは新宗教のこれからを見つめていかなければならないのである」
幻冬舎新書
▽215頁
▽756円
▽幻冬舎=03(5411)6222
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