神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
日々雑感 :梅田善美理事長


  東アジアの歴史にみる人物往来

    さる7月26日と27日の2日間、中国の杭州市で開かれた国際シンポジウム「東アジア文化交流―人物往来」に参加した。これは中国側が浙江工商大学日本文化研究所と日本側が関西大学アジア文化交流研究センターとの共催によるもので、延べ200人の参加者があり、古代、中世、近現代まで主として中国と日本との間に行われた人物往来に関する発表が60数人にも及んだ。
    わずか2日間の日程の中で、これだけの発表をこなすのは容易なことではなく、プログラムの組み方には苦労のあとがみられた。すなわち参加者全員の聴取を対象とするのは初日の午前中に基調講演が2件、それに主題発言という珍しいアレンジによる発表が2件、2日目の午後に基調講演を1件、主題発言を4件という配置だった。その他の時間帯は初日の午後の3時間は時代区分による分科会を4箇所で同時並行させ、2日目は午前中の3時間に分科会を4箇所に分散させて行った。
    発表者のタイトルを見ると、2000年余の日中文化交流にかかわった両国の人物の多彩な顔ぶれに驚かされる。とても全部の報告は聞くことができなかったのだが、個人的に興味をそそられて聴講したテーマだけを列挙してみたい。
『江戸時代日本漂着清人の図像』(関西大学・松浦章氏)、『唐宋詩人の「日本」イメージ』(台湾大学・葉国良氏)、『倭の最初の外交官・難升米』(西南学院大学・高倉洋彰氏)、『羅森と中日文化交流』(北京大学・王暁秋氏)、『日本留学の可能性を考える―日本留学生の事例を中心に』(法政大学・王敏氏)、『ニニギノミコトの降臨―縄文時代と弥生時代の交代プロセスに関する事例研究』(広島大学・李国棟氏)、『呉朗西と飯森正芳―1920年代中日知識人交流の一事実』(早稲田大学・呉念聖氏)、『遣唐使時代の混血児たち』(浙江工商大学・王勇氏)。
 ところで私自身の報告は主題発言の六番目でシンポジウムの最後の発表として組まれていた。タイトルは、『激動の二十世紀、日中間を結んだエスペランティスト―勇敢なる国際主義日本人女性の生涯』。戦時下の不幸な状況下、日本と中国のあいだに立ち、両国人民の友好を促進するために働いた長谷川テルという日本人女性について語ったものである。
 この報告により、今回のシンポジウムの趣旨のひとつの「日中平和友好条約締結30周年記念」に沿って、日中を結んだ長谷川テルの足跡を再度顕彰するとともに、私自身の訪中30周年を振り返ったのである。


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