神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
伊勢本街道を歩く (6)  高井
吉井貞俊氏
(西宮文化協会会長)

 いよいよ山道にかかる感じが濃くなって来るのがこの高井の里といえよう。この聚落の辻にある寛政12年銘の道標には右いせみちと表示してあるため、うっかりそれを信用して右にたどって行けば方角違いになってしまう所、最初この地を訪ねた時、そこに居合わせ青年に、こちらから尋ねる前に右でなく左へ歩きなさいと注意された。この人の名は関本和三郎さん、まだ若かったのに惜しくも亡くなってしまい、その奥さんまで交通事故で逝かれてしまった。さらに加えて長井の旧宿松本家に居を構え、この辺りの主の様なお方であった松本太郎さんも亡くなってしまい寂しい事であるが、この歩きの旅はまた新らたな方々に出逢う事もあり悲喜こもごもと云った所、それでこの私は旅の姿というのでなく極く普通の普段着姿でいかにも郷里へ帰って来たといった感じをもって村の里々を歩いている。だから遷宮の回を重ねるごとにふるさとが広まってゆく感じを覚えているのである。             

(絵・文とも吉井貞俊:絵は本誌に掲載)

 本会会員吉井貞俊氏は現在、兵庫県西宮市に在住し、西宮文化協会会長をしているが、もともと伊勢の出身で、猿田彦神社の社家である宇治土公家に出生した方。氏はその因縁をもって、昭和48年の第60回正遷宮の際、大阪から伊勢まで伊勢参宮本街道を踏破し、さらに平成5年の61回の時にも同じ道筋を歩いたと聞いている。
 そして現在、次回の正遷宮を目ざして、3回目の本街道歩きを始めたとのこと。

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