神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
From Abroad - 外国人研究者紹介

劉 琳 琳 氏
北京大学 外国語学院 日本語言文化系 専任講師

近世の神道史・思想史を専攻
神道文化の授業も担当

今後は古代や中世も視野に

    現在、大学間交流事業における派遣教員として1年間の予定で滞日中。日本大学で古代の祭祀文化や神観念に関する調査・研究に当たっている。
   専門は歴史学。とくに日本の近世神道史・近世思想史を中心に研究を進めてきた。同志社女子大学へ交換教員、また東京大学へ外国人研究員として派遣されたこともある。博士論文では、江戸期における民衆の伊勢信仰を論じた。同論文をもとにした『日本江戸時代庶民の伊勢信仰』をまもなく出版する予定だ。



   本籍の北京大学では日本歴史・社会、日本語の講義を受け持つ。同時に、日本語言文化系の修士課程の授業として神道文化研究も開講し、さらに文化コースの学生には神話や祭祀に関する知識を教えている。同大学の日本宗教文化研究というと、これまでは仏教が主体で、神道の授業はおそらく初めてという。
   「W・G・アストンの『神道』を入門書として使っていますが、ほかにも充実したテキストを揃えていきたい。学生たちには、神道を様々な角度から広く、全体イメージとして捉えてもらえればと考えており、神話、神観念、儀式、思想など、いくつかのテーマにわけて講義内容を組んでいます」
   前近代の神道や神信仰を講義の中心としてきた。一つには自身の興味が前近代のほうにあるからだが、さらなる理由もある。
   「やはり中国では、近代の国家神道に対しては、全体的に歴史の記憶による抵抗感があるのです。また、近代の神道は性格的に言えば文化史というよりも、むしろ政治史の分野に入ると思う」
   もちろん中国社会科学院などには近現代の神道を研究している学者がいるという。
   「一方、近代以前を取り上げることは純粋学問の問題なので、まったく支障はない。前近代の日本文化や信仰を研究する場合、やはり神道は切り離せないものなのです」



    博士論文を執筆する過程で、中世へ、古代へと関心が広がった。今後は古代の儀礼や祭祀、中世の神道思想にも目を向けていきたいという。「仏教の影響で神道における組織面や思想面が体系化された。その構造を探りたい。『神道五部書』の読解、神仏関係の解明なども目標です」
   中国における中世神道の研究は始まったばかり。新進の神道史研究者として、その進展の一翼を担うことが期待されている。


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