神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 鶴岡八幡宝物殿


 毎年の初詣には国内で1、2を争う参拝者でにぎわう鎌倉の顔ともいうべき、鶴岡八幡宮の宝物殿は、本殿に向かって左の回廊に設置されており、参拝したあとすぐに入館できる。宝物を鑑賞したあとには、平成15年に美しく塗り替えられた国指定重要文化財の本殿の建物を、裏からじっくり堪能できる仕組みだ。
通常展では朱塗弓、黒塗矢の御神宝を始め県指定文化財である擬宝珠・金具類・黒壷等を展示しており、とくに御祭神である神功皇后の神服として後白河法皇が奉納したとも、亀山上皇が蒙古襲来に際し国家安泰を祈願して調進されたとも伝えられる御神服五領は、いわゆる十二単であり、完全に保存されている女装としては最古といわれる国宝。例大祭の翌日に奉納される流鏑馬に実際に使用される甲冑なども展示されている。
毎年、新春宝物特別展を開催しており、本殿の屋根葺き替えが終了した平成15年には「鶴岡八幡宮の御造営」展、翌16年には「御社殿整備本殿修理竣工記念」展、今年はNHK大河ドラマ「義経」にちなんで「静御前」展を開催。
5月11日からは好評だった「静御前」展で展示した絵画などに、義経関係の展示物を加えて「義経と静展」を年末まで開催する予定。

  ◇ ◇ ◇

 館長でもあるH田茂穂宮司は、大河ドラマ「義経」もウェルカム、鎌倉が発展するためなら神社は力を惜しまないと話す。また、人間の原風景としての神社の姿を取り戻したいと、自然に囲まれた神社の環境をおおいに活用したいとも。
そのひとつとして、神社に子供の姿を取り戻すために、平成15年から親子歴史と自然教室を開いている。「のこぎりを使えない父親がいるんですよ。私が手伝ってやると、宮司さん、カッコイイって」と笑う。
 平成16年からは神社裏手にある池を利用してのほたる祭り、七夕祭り、夏には泊りがけの鶴岡林間学校、あるいは鶴岡文庫での教養講座開催(4面参照)と、精力的に地域密着の活動をすすめる。
 またH田宮司は海外への日本文化発信にも積極的で、平成12年には30人をこえる奉仕者を引き連れて祭典奉仕のためにフランスへ、また平成13年にはイギリスでの「ジャパン2001」に参加してロンドンのハイドパークで流鏑馬神事を執行した。後者には、イギリスのチャールズ王子、日本の皇太子がそろって参観し、絶賛をあびた。また、ベルギーの王子が八幡宮を参拝に訪れたときは、一緒になって節分の豆まきをしたという。
歴史の重厚な重みのなかで、将来を見据える確かな目を感じさせる古社である。



Copyright(C) 2005 ISF all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。