神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
万博出展記念シンポジウム開催
命の根源――森・社叢の価値を探る

社叢学会 愛知・真清田神社で
神道国際学会が共催


   「愛・地球博」出展を記念するNPO法人「社叢学会」主催で、神道国際学会が共催するシンポジウム、「森、水といのち〜社叢が育む生命の根源〜」が六月四日午後、愛知県一宮市の真清田神社(飯田清春宮司)で開かれた。後援は愛知県・同県教育委員会・一宮市。
   基調講演ではフランス国立社会科学高等研究院教授のオーギュスタン・ベルク氏(地理学)が「鎮守の森とこれからの日本の風土性」と題して話し、続くパネルディスカッションでは社叢学会副理事長・京大名誉教授の薗田稔氏(神道国際学会会長)をコーディネーターに、ベルク、國學院大学経済学部教授の大崎正治、京大大学院人間環境研究科博士課程修了の李春子、社叢学会副理事長・京都精華大学名誉教授の上田篤の各氏が多様な視点から「社叢」の評価を試みた。

「風土は人間存在の契機」
「生物の基盤――地球を再構築せねば」
  基調講演でベルク氏

 冒頭の開会挨拶で社叢学会の上田正昭理事長は森林と人との交わりの重要性について語り、「山があると川がある。川があると海がある。人々の心のなかに森を作ろう」と呼びかけた。
 基調講演でベルク氏は、「風土」を単なる環境としてではなく、「主体的に解釈された人間存在の契機」「人間世界の象徴性として働くもの」として捉え、「近代文明の特徴である物理の次元のみでいくと、惑星としての地球は残っても、人間や生物の世界は喪失する。 人間存在の基盤としての地球を再構築しなければならない」と話した。
 パネルディスカッションで李氏は台湾、韓国、日本での樹林に対する考え方を比較しながら、保護政策と開発のせめぎあいを現状報告した。また大崎氏は社寺林の価値について、手入れが行き届き二酸化炭素吸収力の効率が高いなど生命活動の活発な点を挙げた。さらに上田篤氏は「森は土壌を共有する一体の巨大な生き物」という言葉を引用しながら、水源涵養など生命が大いなる恩恵を受けているその力を認識することが森林保護の前提として重要であることを示唆した。
 シンポ閉会にあたって社叢学会理事・京大名誉教授の米山俊直氏(神道国際学会副会長)は、「鎮守の森は日本固有のものではあるが、森に対する似た認識は各国にある。国際的な共通の理解を広めねばならない」と今後の学会活動の方向を示した。
 同シンポではこのほか、社叢学会の制作したハイビジョン映像「日本は森の国」が上映され、懇親会なども催された。


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