神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館 : 熱田神宮宝物館

大都会のオアシス――広大な森の中に
国宝・指定文化財が百七十余点


   全国屈指の大社、熱田神宮の森は約19万平方メートル。古来、この広大な森は「蓬莱島」と呼ばれ、現在でも名古屋市民のオアシスである。楠の巨木が鬱蒼と茂り、夏の暑さにも境内に入ればホッと一息つくことができる。木々に囲まれて境内のほぼ真ん中にあるのが「宝物館」だ。

「名刀の宝庫」

   同館の収蔵する資料は皇室ご奉納品を筆頭に四千点におよぶ。古神宝類、美術品、芸能具など多彩。うち国宝・国重文・愛知県文化財に指定されるものが176点あるなど、「宝物館」の名にたがわぬ貴重な博物館である。
   とりわけ同館を特色づけるのは豊富な刀剣類で、「名刀の宝庫」として名高い。日本武尊(やまとたけるのみこと)の授かった「草薙神剣(くさなぎのみつるぎ)」が同神宮に奉斎せられる由来により、昔から太刀・短刀・脇差など優秀な刀剣が武家や篤志家から奉納され、それは現代にまで及ぶのである。
  書状類も多い。「尾張名古屋は城でもつ」で有名な土地柄。この地域に関わりの深い織田信長や徳川家康、代々の尾張藩主など有名な武将武家による書状で、祈祷の依頼や見舞など、その内容もじっくり見ると興味深い。
  特にもう一点、あげておきたいのが『熱田本・日本書紀』(重文)。卜部家本系の祖本からの写本で、誤謬がことのほか少なく、傍訓も古体を残していて貴重なものという。
  月ごとにコーナー展示を模様替えするなど、できるだけ多くの所蔵宝物に触れてもらえるよう工夫を凝らしている。
これらの運営努力は、「宝物がいかに護り伝えられてきたか――。美術的鑑賞に加え、文化財保存の価値を認識してもらいたい」という言葉に、象徴的に表れているといえそうだ。

多彩なテーマ
 四十年続く「文化講座」


  宝物館を併設している「文化殿」が力を入れているのが、40年近くも続く「熱田神宮文化講座」。聴講無料で一般に開放している。原則として月に1回の開催。1年間を1シリーズとし、各界の第一線で活躍中の学者・文化人らを講師に招く。テーマは人文科学のみに限定せず、時事問題や自然科学にまで広範囲に及ぶ。
   このほかにも、館報「宝物館だより」をこまめに編集・発行するなど、来館者や地域の人たちへの情報提供やコミュニケーションを充実させる努力がうかがえる。




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