神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
日々雑感 :梅田善美理事長

    神道国際学会は1998年(平成10年)9月から、中国の名勝地である浙江省の省都・杭州市にある浙江大学日本文化研究所で「日本文化と神道」を主題とする講座を開設している。
    同研究所は大学院で、修士課程と博士課程を併設しており、日本の歴史や文化を研究する中国での重点機関のひとつになっている。そこに、「神道」を「日本文化」としてとらえ、学習単位が修得できる講座を開くことができたのはまことに幸いなことであった。それを可能にしたのは、王勇教授との偶然の出会いなのだが、そのいきさつを語るのは、別の機会に譲ることにしよう。
    この7年間、私は同研究所の客員教授として招聘を受け、春秋2回、「日本文化特講」の集中講義を行っているが、その間、同研究所は皇學館大學神道研究所との協力関係を得て、神道文化を博士論文テーマに選んだ院生を伊勢に留学させ、すでに数名の歴史学博士が誕生している。中国には、数多いとは言えないまでも、神道文化を研究した若手の博士が存在するのである。
    私が中国の大学院で日本文化、それも神道を中心にすえて、中国人の院生たちに講義をしている、と話すと、今の日中間の歴史問題の認識の差から、そんなことは不可能でしょう、と言われることが多い。だが、実際に、私は毎回、10数名の中国人の大学院生を相手に、日本文化の精髄である神道をさまざまな角度から解説しているのである。その様子を少し紹介することをお許しいただきたい。
    集中講義はすべて日本語で行っている。受講する院生たちは、すでに四年間あるいはそれ以上の年月をかけて学部生のうちに日本語を習得していて、それぞれが杭州にある日本語学校で教師をしていたり、日本企業に勤めていたりしているので、今どきの日本の若者より、よほどきちんとした日本語を話す。
    講義は月曜日から木曜日までの毎日、午前9時から11時30分までと、午後2時から4時30分までの2回で、金曜日には、その講義についてのレポートを書いて提出する。そのレポートに私が評価を与えると、単位が取得できるわけである。
    毎日の昼食と夕食には、中国語が話せない私のために、院生が交替で付き合ってくれる。土曜日か日曜日には、休みのとれる研究所の教授や院生たちと近郊にある名所旧跡を訪ねる。こんな形で、7年間の講義が続いている。今年(2005年)からは、日本文化研究所の所長以下スタッフが浙江大学から浙江工商大学日本語言文化学院に移籍したので、私は、そちらの学院からも客員教授に招聘されることになった。
    中国を初めて訪問したのは、文化大革命がようやく終焉した1978年だった。あれから、私のパスポートには、45回分の中国国境入出国スタンプが押されている。この12月には、集中講義のための訪中で、46回めのスタンプが押されることになる。



Copyright(C) 2005 ISF all rights reserved
当ウェブサイト内の文章および画像の無断使用・転載を禁止します。