神道国際学会会報:神道フォーラム掲載

From Abroad - 外国人研究者紹介
モロジャコーワ・エリゲーナ 博士

ロシア科学アカデミー東洋学研究センター長・教授
 神道国際学会モスクワ代表部所長

ロシアで高まる宗教・神道研究への関心
   八面六臂の活躍で中心的役割を担う


     昨秋2ヵ月間、ロシア科学アカデミー東洋学研究所からの客員研究員として法政大学に滞在した。同研究所では日本研究センター長という要職を務めている。
     海外の日本研究というと歴史民俗的な事項への関心を想像しがちだが、「おもな作業は現在の日本社会における様々な問題を多面的に扱う」ことだという。もちろん宗教状勢というテーマも入ってくるが、神道・仏教・キリスト教など、これまでの個々の宗教研究に止まらず、日本人の宗教観の解明といった共同作業も念頭に置いている。
     この論点は現在、とても重要なことなのだという。「宗教の問題が政治的な闘争、戦争の原因になる中で、日本では様々な宗教が平和的に共存している。共存を可能とする日本的経験を探るのは非常に大事です」

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    一方、教授職にある国際関係大学に宗教学研究センターが新たに設立された。ロシア全体で宗教への関心が拡大していることがここにも象徴されている。
    日本研究の中で神道への関心を20年以上にわたって寄せてきたが、宗教研究の勢いが増した現在、神道研究にとっても好適な状況と感じている。数年前に日本の祭りに関する著書を出したところ、これを読んで神道や祭りに興味を持ち、神道学を卒論や修士論文のテーマに選択する学生や大学院生が増えたらしい。
     年刊「日本研究年鑑」の編集責任者を務めている関係で、ロシア国内における日本研究の傾向には敏感だ。「ここ数年、神道関連の論文を1、2点、収録する状況になりました。これも研究者の神道への関心がどんどん高まっている証明の一つと言えると思います」

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    昨年から本会モスクワ代表部の所長も兼任。同代表部の事業として今、一般の人々も読める神道書の出版を目指している。神道学者の加藤玄智と小野祖教の概論をロシア語に翻訳し、戦後日本の神道をテーマとした自らの論文を加える。
     「関心が高まったといっても、じつは一般の人はマスコミで『靖國問題』を見ても本質を理解できない。『靖國』だけではなく、日本社会における神道の役割もよく分からない。神道とは何かを正確に紹介する必要があるでしょう」
     同代表部ではさらに、昨年12月、武道と日本文化と神道のつながりを論点にシンポジウムを催した。武道関連の雑誌を刊行するなどしている「武道スポーツ」という組織と連携しての開催で、ここでも日本文化の紹介に一役買った。

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    神道研究者としての夢は一つの神社に1年間住むこと。「神社のお勤め、年中行事、そして地域社会との関係をじっくりと見てみたい」。だが、現在の八面六臂の活動状況からすると、この夢は当分お預けになりそうだ。


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