神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
第1回・専攻研究論文発表会  東京・お茶の水で

各専門領域の最新研究成果を発表
本会理事の十人が発表・コメント


    神道国際学会の理事による第1回の専攻研究論文発表会が昨年11月12、13日、東京・お茶の水で開かれ、本会理事会を構成する国内外の学者・研究者・専門家が、それぞれの専門領域における最新の研究成果を発表した。
    この発表会は、学術団体としての活動を一層充実していくためにも通常のシンポジウムやセミナーとは別の機会として実施すべき、と理事会などでもたびたび出ていた意見に呼応して開いたもの。
    今形式での開催は初の試みということで一般に公開はしなかったが、各発表テーマに関連の外部研究者や神道関係者、滞在中の海外の日本文化研究者、メディア関係者らが招待された。
    発表とコメントは後日、紀要としてまとまる。発表のあったのは9件で、次のとおり(敬称略)。
    発表1)米山俊直(本会副会長、京都大学名誉教授、国際京都学協会理事長)「日本の民間信仰とアジアの民間信仰」=アニミズムとして軽視されがちな民間信仰のルーツ、とくに日本古来の文化伝統などについて今後、文化人類学の視点で深く考察していくとし、被支配者、縄文、祖先祭祀などのポイントを示した。コメンテーターは森田三郎(甲南大学教授)と吉井貞俊(西宮文化協会会長)。
    発表2)マイケル・パイ(本会理事、大谷大学客員教授)「今日の神道と仏教の接点」=神道と仏教の複雑な習合現象の事例を全国各地の写真により紹介した。コメンテーターは薗田稔(本会会長、京都大学名誉教授、秩父神社宮司)と三宅善信(本会常任理事、金光教春日丘教会長、レルネット社長)。
    発表3)ジョン・ブリーン(本会理事、ロンドン大学東洋アフリカ研究学院日本韓国学部長)「靖国―歴史記憶の喪失」=靖國論の視座として「歴史記憶」の次元を提示し、靖國神社の記憶の手法(テキスト、展示、儀礼)とその問題点を指摘した。コメンテーターは新田均(皇學館大学教授)と國弘正雄(本会理事、英国エジンバラ大学特任客員教授)。
    発表4)アレックス・カー(本会理事、著述家)「タイの文化研修プログラム」=京都、バンコクなどを基点に運営するオリジン・アート・プログラムを紹介し、伝統文化に底流する精神的ルーツにまで貫通するには身体体験が必要と訴えた。コメンテーターは西野祥隆(株式会社庵専務取締役)。
    発表5)茂木栄(本会理事、國學院大學助教授)「神道の映像民俗学的探求に向けて―戦後日本の民俗映像記録―」=戦後の民俗映像記録の歴史をたどり、民俗文化財記録の諸側面における整備・充実の必要性を主張し、自ら携わる神道の映像を紹介した。コメンテーターは姫田忠義(民族文化映像研究所長)。
    発表6)ベルナール・フォール(本会理事、米国スタンフォード大学教授)「山王神道を十禅師の立場から見る」=山王神道に重要な役割を果たした十禅師を例に、単純に本地垂迹と規定できない仏教と神道の関係の本質を考察した。コメンテーターはマイケル・パイ(前出)と佐藤眞人(北九州市立大学助教授)。
    発表7)薗田稔(前出)「日吉山王社をめぐる神仏関係」=日吉山王祭祀の歴史、天台法華宗と山王神道の教学的関連を捉えることで、神仏習合ないし神仏共存の根本的な理由を探ることを試みた。コメンテーターは嵯峨井健(下鴨神社禰宜)。
    発表8)王宝平(浙江工商大学日本語言文化学院副院長・教授)「明治時代の地誌編纂と中国人の日本研究―姚文棟を中心に」=中国の日本史研究のうち明治以降〜開戦前までに焦点を当て、地誌編纂事業や、外交官らによる交流と研究および研究書の実体を紹介した。コメンテーターは王敏(法政大学教授)と泉敬史(札幌大学教授)
    発表9)栗本慎一郎(本会理事、東京農業大学教授)「神社建築の聖方位と大陸の価値観の交流」=日本列島の建築方位に見られる聖なる方位の存在をはじめ諸点を挙げ、日本初期王権における諸側面の起源は大陸方面にあると提起した。〈関連発表=金子貴一(大学総合研究所専任研究員)「星の宮神社と星辰信仰」〉。コメンテーターは渡辺豊和(渡辺豊和建築工房主宰、京都造形芸術大学教授)と鎌田東二(京都造形芸術大学教授)。

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