神道国際学会会報:神道フォーラム掲載 |
神道展示館訪問 : 賀茂別雷神社(上賀茂神社)高倉殿 |
扉一枚の向こうに神の佇まい ―神域の一部を公開 } 本殿参拝から神宝拝観まで神職がきめ細かに案内 京都三大祭の一つ「葵祭」で知られる古社。文字どおり神秘なる儀式とお祭りを行ない、古色を内に秘めた佇まいから、「上賀茂さんは近寄り難いのでは」という印象を持っている向きもあるかもしれない。 だがそれは杞憂である。神職のきめ細やかな案内と解説を聞き、感激の表情で参拝する人々の姿が、そこにはある。 「オープンにできるとろはオープンにして、多くの方に親しみをもってお参りしていただければというのが我々の願いです」と案内に奔走する一人、権禰宜の村松晃男さんは言う。 平成六年、京都市内の他社寺とともに世界遺産に登録され、以前にも増して国内外から注目を浴びることになった。「数千年も続いてきた秘事を引き継ぎ、かたくなに守っていくのも神主の仕事」(村松さん)としながらも、一方では、日本人の神道への関心が薄れていく状況に危惧も高まっていた。 そんななか、同神社では昨年から、これまで一般の人が立ち入ることのできなかった神域の一部を開放。いにしえから神坐す、その雰囲気に触れ、忘れかけた日本の伝統と文化を思い出してもらうことにした。「たった一枚の扉なのに、そこを越えると違った空気を感じていただける。ご神宝を拝観するだけで目覚めていただける」と村松さん。もう本殿・権殿(国宝)は目の前である。 参拝にあたっての説明、本殿参拝、神宝拝観、そして四季折々に美しい境内での安らぎ――。この一連の案内を、神職がローテーションを組んで担当している。 新たな方針での参拝・拝観が始まって半年余。数万人が訪れ好評だ。村松さんは「ほとんどの方が『清々しくて素晴らしい』『ご神前で気持ちが新たになった』『このような機会をぜひ続けて』などとおっしゃってくださる。案内役の我々も励みになります」と神職一同の喜びを話した。 奥へ底へ――本殿に入る雰囲気 神宝拝観の高倉殿 神宝を拝観できるのは高倉殿。同殿自体も多くの社殿とともに重文に指定されている。「まるで御本殿に入ったような雰囲気だとよく言われます」(村松さん)。御神服や、神前に納める御飾太刀、御弓などが収まるほか、四季の年中祭典で奉納する同神社独特の御景物なども展示されている。 「最高の技法で作られながら非常に素朴。表面にとどまるのでなく奥へ、また底へと入っていく深さと言ったらいいか――。そのあたりを是非、感じとっていただければ」(同)と願っている。 |
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