神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
神道展示館訪問 : 鹽竈神社博物館

みなとまち塩竈――
塩と製塩のミュージアム
社会教育・文化発展への寄与を目指す



    景勝・松島湾や牡鹿半島、金華山を望遠する丘陵地。「一森山」と呼ばれるこの地に鎮座するのが志波彦神社・鹽竈神社である。産業振興の志波彦大神、国土開発とともに海上守護・大漁満足をもたらす武甕槌神と経津主神、そして製塩を授けた塩土老翁神――。港町・塩竈の人々は、日々の生業と切っても切り離せないその御神徳を仰ぎながら、親しみを込めて「しおがまさま」と呼ぶ。
    志波彦神社は延喜式内名神大社、鹽竈神社は陸奥国一之宮。いにしえより朝廷や都人からの崇敬も篤かった。明治以前の鹽竈神社では29の世襲の社家が神前に奉仕し、秀逸な人物を輩出した。その一人、江戸後期の藤塚知明は学識高く、書への造詣も深かった。林子平や蒲生君平ら著名な文人たちとも交わったという。
    遠近から多くの文人・師事者が訪れた境内の藤塚邸。その跡地に今、建っているのが鹽竈神社博物館である。

神宝、神社資料、伊達藩主奉納の太刀なども

    来歴にふさわしく、博物館では神徳宣揚とともに「社会教育の普及、学術の研究、文化の発展に寄与する」と設立理念にうたう。
    御神宝類や、神社の歴史を物語る絵画・書跡・古文書などの諸資料とともに、藤塚と親交のあった林子平が設計した「日時計」(寛政四年銘文)、かまどの神様として家々に祀られた木製・土製の「かま神」(うち10点は県文化財)など興味深い展示品が並ぶ。
    なかでも注目されるのは歴代の仙台藩主である伊達家が奉納した太刀の数々。その多くは文化財に指定され、仙台藩お抱えの刀工たちが高い技術を誇っていたことがうかがい知れる。
    ユニークなのは「塩のミュージアム」と銘打った二階展示室だ。塩と塩作りに関する概要を学ぶことができる。御祭神の一柱、鹽土老翁神は製塩法を教える神であり、また神社にちなんだ塩竈の地名も製塩と縁が深い。
「暮らしの中の塩」「塩の豆知識」「塩を使った実験」「神社と塩」など様々な疑問に答える展示のほか、古代の製塩にもとづく「藻塩焼神事」のビデオも上映する。さらに、一大漁港として名高い塩竈らしく、海と漁業に関するコーナーもある。このあたりは「社会教育」への貢献を目指す当館の面目躍如といったところだ。
    屋上への階段を上がるとそこは展望台。潮風の香りとともに見渡せば、市街地と漁港、そして日本三景の「松島」を一望できる。

▼ 館長=宇仁繁儀宮司
▼ 所在地=宮城県塩竈市一森山1-1
▼ 電話=022-367-1611
▼ 拝観時間=8時半開館。
    閉館は4月〜9月が17時、10・11・2・3月が 16時半、12・1月が16時
▼ 休館日=年中無休だが、展示替えなど で臨時休館あり
▼ 入館料=一般200円、中学・高校生150円、小学生80円


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