神道国際学会会報:神道フォーラム掲載
哀悼 本会副会長・米山俊直氏逝く

    本会副会長の米山俊直氏におかれては、かねてより病気療養中のところ、平成18年3月9日、逝去された。享年75歳。告別式は3月19日に近親者のみで営まれた。
 米山俊直氏は、アフリカの民族や農村研究などにより文化人類学を広められた、日本における文化人類学の第一人者。京都大学教授・大手前大学学長などを歴任され、文化人類学の啓発、若手研究者の育成に努められた。
 また都市の祭についても幅広く研究され、本会が開催した第6回神道セミナー「神道における祭りの意義」では、八坂神社を例にあげて都市の祭についてそのご研究の一端を発表され、おおくの関心をよんだ。
 本会においては設立当時から理事を勤められ、とくに昨年1月からは副会長として、薗田稔会長の右腕となり、活躍された。ご病気が発見されたのは一昨年9月だったが、その数日前にはニューヨークの国連フォーラムで「コメと神道」について英語で講演されるほどお元気だった。
 ここに神道国際学会にたまわったご指導を感謝し、謹んで哀悼の意を表するとともに、心からのご冥福をお祈りする。


米 山 俊 直 先 生 を 偲 び 奉 る    会長 薗田 稔


 きびしかった今年の冬を押しのけるように各地で開花した桜の花さかりも、今はあわただしく散り始めて惜別の心根もひとしおの今日このごろ、またしても本学会にとって大切な方を幽冥の境にお送りせねばならぬことは、かえすがえすも哀惜の念に耐えないところです。
 中世の旅の歌聖、西行法師は「ねがはくば花のもとにて春死なむこの如月の望月のころ」との詠歌を頼りに花のさかりに他界されたとのことですが、米山先生も、去る3月9日の未明、京の桜だよりを待ちかねたように卒然と黄泉路を発たれてしまわれました。
 先生には、本学会が平成6年に設立された当初より理事として諸活動に積極的なご貢献をたまわり、特に昨年度の設立十周年を期しての組織替えに当たって強力な推進役として副会長をも引き受けていただきましたことは、何者にも優るご厚恩の賜物でありました。実は、先の社員総会と第10回神道セミナー「森に棲む神々」とを京都会館で開催した3月19日の当日には、ごく近親のみの密葬がしめやかに斎行されたのですが、ご遺族のご希望で公表を慎まねばならず、総会の席上も追悼の礼を控えさせていただきました。
 先生にたまわったご厚誼は二十数年来の公私にわたってさまざまですが、なかでも私が京都大学に奉職した平成3年からの交遊のかずかず、平成14年に創設された社叢学会での活動協力と本学会での活発な研究協力など、つい先日までのご病躯をおしての最後の最後まで平然と常人をもしのぐお仕事ぶりには、陰ながらご病状を案じつつ感嘆措く能わざるものがありました。
 かの本居宣長翁がその晩年に「神道の安心は死後の安心無きが安心」と喝破されたように、幽冥の世界は浅はかな人知を超えて神々にお任せし、生者は唯亡き人を御霊として現世に祭り和めることにのみ死後の平安を託するのが、神道を志す者の習いと存じます。
 この上は、会員諸兄姉とともに先生の遺徳を偲びつつ本会の発展に尽瘁し、御霊安かれと鎮魂のまことを捧げつづけることこそ肝要と思う次第であります。

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